2004年5月18日4限(W203室)

川島 真(shin@juris.hokudai.ac.jp)

アジア政治論  <中国外交論>

第六回講義レジュメ

中国政治の基層(1)政治理念、正当性・正統性、ナショナリズム



















     「中国」の捉え方

     正当性の問題

     正統性の問題

 

Settings(2)外交と国際関係(中華思想と大国意識、朝貢貿易体制論)

 

     中国自身の有していたとされる対外観

● 17−19世紀の対外関係の基礎

     実際の制度としての進貢システム

     奪われた領土、領域、「恢復中華」

19世紀後半の歴史 → いわゆる「朝貢ベルト」の喪失

    「属国」の意味の変化 → 外交権、内政干渉型への変化(喪失過程が敗北、として認識)

    「中国」としてのアイデンティティ形成と、「本来あるべき姿」としての歴史の編纂へ

    → 失地回復運動としての国権回収運動、失われた領域としての旧朝貢圏

 

● 新たに形成される大国意識

    清末、ハーグ平和会議の衝撃 → 一等国、二等国、三等国

    光緒新政下における「不平等条約」体制下にあるという認知。

    「瓜分之危機」、社会進化論の影響

    → 守るべき単位としての「中国」、それを保護。

外国側も「中国保全論」(植民地にならない中国)

    ひとしなみの「独立」「主権」を目指す方向へ。→ 「主権」を用いた領土防衛、国権回復

    他方、最終目標として「強国」=列強のひとつと成ることを目指す

(列強と同等の待遇、国際連盟非常任理事国など)

 

中国政治の基層(1)政治理念、正当性・正統性、ナショナリズム

 

●中国政治における理念

   大鍋飯

   「砂のようにこぼれおちる」(孫文)

   天命→皇帝、天意にそむかないこと、易姓革命(革命)

   天子の徳、それに近づく科挙、人格の優れた者による統治(賢人主義)

   「良い鉄は釘にしない。良い人は兵隊にならない」→文人主義

   礼・法・徳

   王道・覇道

 

●現代中国における正統性・正当性の問題

  清朝の崩壊 → 中華民国の継承 → 中華人民共和国へ

 

     中国ナショナリズム

いかにして読み解くか。

 

中国政治の基層(2)空間論(中央、地方)、官と民、民主化

 

     広大な中国をいかに統治するのか、あるいはなぜ中国として維持されるのか。

 

     中央と地方の関係はどのようになっているのか

「・・・自治区」はどのようになっている??

「少数民族」は?

 

     官と民の問題は?

 

 

●中国の民主化の過程?

 

 

 

 

 

 

<自治について>

  (1) 「中華連邦共和国構想」(1920年代の中国共産党) ⇒ 自治権、分離権

    「中華ソビエト共和国憲法大綱」(1931年) ⇒ 中華ソビエト、中華ソビエト自ら組織、あるいは自治、いずれも選択権あり。

    「各少数民族に民族自決権、および自発的希望による漢民族との連邦国家を作る権利を認める」(1945年、「連合政府について」)

  (2)延安時代、支配区のモンゴル族などに対して区域自治。40年代後半の「東蒙古自治政府」「東トルキスタン共和国」をことごとく否定。

  (3)「中華人民共和国は各民族の友愛協力の大家庭」「少数民族の集居地区では区域自治をおこなう」「民族の言語、風俗、習慣、宗教を保護する」「大民族主義と狭隘な民族主義に反対する」(49年共同綱領)

  (4)「各民族の自治区は、中華人民共和国の不可分な一部である」(52年民族区域自治要綱)

        ⇒完全に分離独立否定

(5)現在の自治

     文字・言語の使用、公安部隊や民兵の編成権、自治条例の制定権

        中央政府は民族幹部の保護育成をおこなう

「民族自治」と「地方自治」の混乱

中国の民族区域自治の実質は、特殊な地方に付与された若干の地方自治と、「民族の文化的な自治」に過ぎない。

  (6)民族闘争   

    ・「民族闘争はつまるところ階級闘争」(63年毛沢東)

     59年 チベット動乱

     89年 チベットに戒厳令

  「改革開放」時代、自治区は何で統合される??

    ⇒経済発展?中華ナショナリズム?中国ナショナリズム?

    ⇒宗教などの台頭

  <中央・地方関係>

(1)        区分

    1級行政区(省・自治区・直轄市)、…市鎮に到る4層構造。

(2)「地方自治」は実質的にも論理的にも認めていない。

   (a)地方の人民代表大会はそれじたいが権力体であるから自治は必要無い(レーニン)

      所謂「自治」が出てくるのは自治区だけ。

   (b)しかし、中央の統一指導を前提に地方の積極性を発揮させるという方針。

   ⇒(ab)は矛盾。

(3)中央の権限  

地方政府の幹部の任免、配置転換権

地方政府の法規、組織条例などの批准権

地方政府の行政管理活動に対する強制命令権

地方政府は中央政府のすべての指導を執行する義務をもつ

 (4)「収放」サイクルについて

  ・問題は財政権、企業管理権

 

 

 


 

 

 

資料

「国家と人民のために」胡錦濤主席が抱負

(人民網HP http://j.people.ne.jp/2003/03/20/jp20030320_27201.html)

 

10期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が18日午前、人民大会堂で閉幕した。胡錦濤国家主席は閉幕式の演説で、「複雑で変化の激しい国際情勢、国内建設の任務という極めて厳しい新たな情勢の下、大きな責務を担っていく」と述べ、人民が与えてくれた神聖な職責を履行し、各民族の監督を謙虚に受け止めていく姿勢を示した。胡錦濤主席は与えられた職責を果たすための抱負として、次の4点を挙げた。

 (1)民主主義を発揚し、法律に基づいた行政を進める。党の指導、人民主権、法治主義の有機的統一を堅持するとともに、社会主義民主主義の制度と原則を守り、社会主義法制の統一と尊厳を維持していく。

 (2)祖国に忠誠を尽くし、人民のために尽力する。国家と人民の利益をすべてに優先させる。

 (3)中華民族のすばらしい伝統を発揚・継承し、先輩指導者らの崇高な人徳、自己満足と怠慢を否定する精神を学習・発揚する。

 (4)己を厳しく律し、不正に走らず人々に奉仕する。謙虚な姿勢と困難に立ち向かう精神を堅持し、国家と人民のために職務に励む。  「人民網日本語版」2003320

 

  資料

温家宝新総理が国務院第1回全体会議で演説を発表

人民網http://j.people.ne.jp/2003/03/22/jp20030322_27281.html

 

国務院の温家宝新総理は21日午前、国務院第1回全体会議で演説を行った。会議では国務院指導者の役割分担を決めるとともに、「国務院工作規則」を採択した。温家宝総理は演説で「今期政府の任期となる5年間は、小康社会(いくらかゆとりのある社会)の全面的建設に向けた初期段階であるとともに、重要な段階でもあり、光栄な任務だが責任は重い」と強調。国務院のスタッフに対しては、「胡錦濤同志を総書記とする党中央の指導の下、憲法と法律によって付与された職責を忠実に果たさなければならない」と述べ、党や人民の信頼に背いてはならないと強調した。  温家宝総理は今期の任務について、

(1) ケ小平理論と「三つの代表」思想に基づき、中国共産党第16回全国大会の精神を真剣に実行に移し、小康社会を全面的に建設、社会主義現代化の推進を加速する

(2) 発展を第一任務とし、経済建設を中心に引き続き改革を推し進め、対外開放を拡大、社会主義市場経済体制を徐々に整備し、経済構造の戦略調整を加速させる。科学教育による国家振興戦略と持続可能な発展戦略を実施し、新たな工業化の道を歩み、国民経済の高成長と健全な発展を促進し、人々の生活水準を高めていく

(3) 改革発展の安定した関係を正しく処理し、社会の安定を全力で維持する

(4) 民主法制建設と精神文明建設、政府機構建設を強化し、社会主義の物質文明、政治文明、精神文明の調和的発展を促進し、中国の特色ある社会主義の偉大な事業を全面的に推進する――の3点を挙げた。

 温家宝総理はそのうえで、「新政府は新風を吹き込まなければならない」とし、そのカギとして(1)科学的、民主的な政策決定を行う(2)法律に基づいた行政を行う(3)行政に対する監督を強化する――の3点を推進していく必要性を強調した。 全体会議には、黄菊、呉儀、曽培炎国務院副総理、周永康、曹剛川、唐家セン、華建敏、陳至立国務委員らが参加した。   「人民網日本語版」2003年3月22日

 

 

 

台湾問題について 担当部門による声明(摘要)


 中国共産党中央の台湾工作弁公室、国務院台湾事務弁公室は17日、現在の両岸関係(大陸・台湾の関係)の問題について声明を発表した。声明の摘要は次の通り。

  現在両岸関係は厳しい情勢にある。中国を分裂させる「台湾独立」を企図する活動を断固として阻止し、台湾海峡の平和と安定を守ることは、両岸の人々にとって差し迫った任務だ。 陳水扁氏は4年前、誠実なようすで「5つのノー」(「台湾独立」を宣言しない、「国名」を変更しない、「二国論」を憲法に盛り込まない、統一か独立かの住民投票を行わない、「国家統一綱領」「国家統一委員会」を廃止しない)を約束した。4年間の陳水扁氏の行為は、これらが食言であり、まったく信用のならないものだったことを証明している。「台湾独立」は宣言しないものの、さまざまな分裂勢力を糾合して「台湾独立」活動を進めている。いわゆる「国号」の変更はないとしながら、「台湾の名を正す」「中国化を除く」を絶えず宣伝している。「二国論は憲法に盛り込まない」としながら、「一辺一国」の分裂の主張を打ち出している。現状を変化させるべきかどうかの「統一か独立かの住民投票」をしないとしながら、あの手この手を尽くして住民投票の形で「台湾独立」活動を進めている。「国家統一委員会」と「国家統一綱領」の廃止はないとしながら、これらを棚上げし、名ばかりの存在にしている。陳水扁氏はさらに、「憲法制定」を通して「台湾独立」へのタイムテーブルを公然と打ち出しており、両岸の関係はこれにより危機に瀕している。
  「台湾独立」に平和はなく、分裂に安定はない。われわれは「一つの中国」の原則を堅持する立場について決して妥協をせず、平和的な話し合いへの努力を決して放棄せず、台湾の人々とともに両岸の平和的発展を話し合う誠意を決して変えず、国家の主権と領土保全を守る意思を決して揺るがせず、「台湾独立」を決して容認しない。
   今後4年間、いかなる人が台湾当局者になろうと、「世界に中国は一つしかない」「大陸と台湾は同じ中国」と認め、「台湾独立」の主張を捨て、「台湾独立」の活動を停止しさえすれば、両岸の関係は平和・安定・発展という明るい展望を開くことができる。次の点が実現できるだろう。
  
両岸の対話と交渉、平等な話し合いを回復し、敵対状態を正式に終了し、軍事的な相互信頼システムを構築し、両岸関係の平和・安定・発展の枠組みをともに打ち立てられる
  
適切な形で両岸の密接な連絡を保ち、両岸関係の中で生まれる問題を適切なタイミングで解決できる
  
全面的・直接・双方向の「三通(通航・通商・通信)」を実現することで、両岸の人々による経済貿易、交流、旅行、観光などの活動を利便化できる
  
両岸による経済協力緊密化協定を締結し、利益を共有できる。台湾経済は両岸の経済交流と協力の中で、産業構造を最適化し、企業の競争力を高め、経済のグローバル化や地域一体化による試練に大陸と共に対処していくことができる。台湾の農産品も、大陸の幅広い販売市場に参入できる
  
両岸の人々の間での交流を緊密にし、隔たりを消滅させ、相互の信頼を強め、共通認識を蓄積できる
  
両岸関係の和やかな雰囲気の中で、両岸の平和、社会的安定、経済的発展を求める台湾の人々の願いを実現することができる
  
話し合いにより、台湾地区の国際社会における活動範囲の問題を適切に解決し、中華民族としての尊厳を共有できる
  しかし、台湾当局者が「台湾独立」という分裂の立場を堅持し、「一辺一国」という分裂の主張を堅持するのであれば、こうした展望が実現できないばかりか、両岸の平和と安定、利益の共有が葬り去られることになる。
  現在、台湾当局者の目の前には2本の道がある。どちらを選ぶかは、台湾当局者が選択しなければならない。中国人にとって、自国の主権と領土保全を守るより重要かつ神聖なことは何もない。われわれは最大の誠意を持って、最大の努力によって、祖国の平和的統一の展望を勝ち取っていく。しかし、もし台湾当局者が危険な方向へ走り、「台湾独立」という重大な事変を引き起こすのであれば、中国人は一切の代価を惜しまずに、「台湾独立」という分裂へのたくらみを徹底的に粉砕するだろう。(編集UM)
  「人民網日本語版」2004年5月17日