2004年度アジア政治論講義への質問・回答<13>
(7月13日配布分)川島 真(shin@juris.hokudai.ac.jp)
【講義への希望・要望・感想】
<試験について>
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(1)
試験の「要領」について質問します。(5)に表記も採点対象とする」とありますが、「表記」とは具体的に何のことですか。(7月6日分、学部四年、ほか一名) (2)
レジュメに書いていなかったので、おそらく無いのでしょうが、定期試験の回答には字数制限はありますか?(7月6日分、学部三年、ほか一名) (3)試験の剽窃についてですが、先生のレジュメや文章をそのまま使うことも剽窃とみなされるのですか?(7月6日分、学部三年) |
⇒(1)「表記」というのは、「日本語」のことです。主語の無い文章、「てにをは」の間違い、あまりに酷い漢字ミス、そして「デス・スマ調とデアル調の混合文」、あるいは携帯メイル的な「話し言葉」などは減点対象とするということです。意味不明の文章、実際にはとても多いのです。
(2)字数制限はありません。ただ、自動的に90分以内で書き写せる(あるいは書ける)量ということになります。
(3)・・・これはどうしましょう。確かに、小生がレジュメに書いた文章などもありますね。その場合も、「○○回の講義レジュメにあるように」などと記してください。
<参考文献リスト>
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可能なら講義の参考文献リストを配布してください。(6月29日分、学部四年) |
⇒そうですね。毎年つくろうかと思いながら、レジュメの中にあげたり、口頭で話す程度にとどまっています。この点、次年度には改善したいと思っています。
〈ご機嫌うかがい〉
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UMASSから帰ってきた××です。お世話になりました。単位もいくつかとってきました。これからどのコースに行くか、卒業を延ばさずに卒業できるかなど、なぞだらけです。(7月6日分、学部三年) |
⇒おつかれさまでした。留学はいかがでしたか?留学の最大の目的は、(1)ご当地の視点、視線を体得すること(ウィンドーズを複数持つこと)、(2)次に訪問したときに歓迎してくれる友人をつくること、に尽きると思っています。そうした意味では、きっと「成功された」ものと思います。さて、単位のことですが、よくよく計算なさってください。単位互換できるものがあればしますので、早めに教務に相談ください。また、欧米方面の学生国際交流委員は會澤先生なので早めに連絡をとられることをお勧めします。またゼミなどについて、もし海外に出られる前に通年ゼミなどをとっておられたら、後半今年の後期に出れば4単位認められるといった制度もありますので、活用ください。私的な手紙と思いましたが、皆さんに共通の情報でもあるので掲載しました。
【講義の内容】
<64事件と報道>
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今日の講義もたいへん刺激になりました。六四事件の情報統制についてお話がありましたが、中国のほうはインターネットなどからの情報を自由に受け取れるのですか?また、発信した情報を削除されることに対する不満はどのように処理されるんでしょうか。(先生の感覚としてお答えいただければと思います)(6月15日分、学部三年) |
⇒インターネットは本来、統制されにくもののはずなのですが、大学などでは端末が一元的に管理され、また街中のネットカフェでやるインターネットやメイルなども無料のアクセスポイント(番号163や167)が設定されることによって、管理がしやすくなっています。もちろん、中国で海外のアクセスポイントにダイヤルアップすれば統制はされません。そうした意味では「ざる」です。ただ、多くの場合、そうした海外のアクセスポイントにはいる余裕はないわけですから、管理の対象になってしまいます。危険と認定されたホームページにはアクセスできない、またその個人がどのようなページを見たかが記録されるわけですから、厳しいものがあります。またホームページを利用して情報を発信する側からすれば、確かに問題ですが、中国において「メディア」というのはそもそもそういうものであって、フリーなメディアはないのですから、不満がどの程度でるのかわかりません。ただ、最近では、そうした不安をむしろ共産党系のメディアが積極的に受け入れ、党を批判することで、不満が「くすぶらないように」しているとも思えます。
‹日露戦争›
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日露戦争がアジアの諸国の独立に影響を与えた面があったとは思うのですが、日本以前にヨーロッパの軍隊に勝った(確か国単位ではない)アジア系の軍隊があったと、以前、何か本で見たことがあるのですが(記憶があいまいなので自信はないのですが。)また日露戦争は、ロシアが劣勢ではあったが、負けたとは考えていない人も多いのではないかという話も聞いたことがあります。(6月29日分、学部3年) |
→イスラム軍がピレネーを越えていくときに、当然ヨーロッパの軍隊を破っていますし、トルコは何度も欧州軍に買っています。モンゴルも欧州に攻め込む際に、次々と欧州軍を破っています。別に不思議なことではありません。ただ、19世紀以降となると決して多くないと思われます。また、ロシア側は「日中連合」とか、引き分けによる講和といったかたちで理解をします。
<過去への評価>
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「過去を現在から弾劾するな」 なるほどなあ、と納得しました。でも構成の人間は過去を「評価」しないといけませんよね。「評価」は先生が後段でおっしゃった「当時の人々の行動の背景も考察すること」ですか?でも「弾劾」と「評価」は微妙に近いですよね。(かな?)だから特にWWII観なんかは「弾劾」的になるのかなあ。「評価」しているつもりでも。またなにやら支離滅裂な感じですみません。(6月29日、学部三年) |
→同じような内容で研究室まで質問にいらした方もいらっしゃいました。確かに、「弾劾」と「評価」は一見近いですね。ただ、「弾劾」というのは、同時代的、当事者的なコンテキストを無視して、現代的、また結果を知っている特権者として、結果にとって有意義であったり、現在にとって評価可能性があるものだけを評価しようとする者によりおこなわれます。それに対して、評価は同時代的、当事者的なコンテキストを重視します。もちろん、だからといって戦争のことも含めて、その時代をまるまる肯定するのではありません。だから「肯定」とか「是認」ではなくて、きっちりとした調査に基づく「評価」が必要なのです。ここはバランスが必要です。
小生がこれを強く感じたのは、ある機関から依頼されて「従軍慰安婦」の調査をおこなったときのことです。そのとき、さまざまな被害記録を調査しました。そこでであったのは、膨大な暴行、強姦、そして暴行殺人などでした。無論、暴行などをした上で、連行して「慰安婦」となった人もいました。小生は、「慰安婦」の調査結果ともども、一万にも上るその被暴行/強姦+殺人、そして精神的障害を受けた人々についても調査すべき・・・、そうした人々の記録を無視して、ただ慰安婦だけをつむぎだす作業に疑問を覚えた・・・といった調査記録を提出しました。しかし、その(公的)機関から、「削除」を求められました。慰安婦に特化するように、というのです。その機関の設置目的、そして運動論的に、慰安婦に注目することは有意義なのでしょうけれども、歴史研究として、このような「削除」要求に屈することはできませんでした・・・・・
【講義から離れて】
<台湾人観光客殺害事件>
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台湾人女性殺害事件という、とても考えられないような残酷な事件が報道されています。同じ日本人として、残念という一言では片付けられない感情が強くあります。亡くなった女性のご家族をはじめ、台湾人にとっての日本人のイメージ、日本のイメージに大きく影響を与えたと思います。この件についての先生のご意見を聞かせていただきたいです。中国、台湾からの政治的関係にも今後影響は出るでしょうか。(7月6日、学部三年) |
⇒「観光」というものは、非日常的な空間を提供するものです。日本は、「観光年」としてVisit Japan Campaignなどを展開し、台湾を含む東アジアから大量の観光客を呼び寄せようとしています。他方、ここ数年、治安の悪化は止め処もなく進行しています。観光客は、非日常にいるため、本国ではしないこと、日常ではしないことを、ついついしてしまいがちになります。そうした意味では、治安という意味ではきわめて「危険」だということになりましょう。しかし、観光キャンペーンをおこなっている側には、治安のことは別管轄で、考慮外ということになりましょう。今回は観光客ですが、すでに日本在住が日常化している、外国から来ているビジネスマン、留学生についても、「怖い思い」をしたことがある人はとても多いものです。しかし、こうした「怖さ」をケアするシステムが日本にはありません。外国人や、日本の常識の範囲の中にいない人がわかるようなシステムでないし、新規参入者に説明する装置、機能も希薄です。他方、農村部では人的紐帯が強いため、犯罪の対象が日本人を含む観光客になりがちであるということも留意すべきでしょう。
日本と台湾の関係で言えば、もう15年ほど前になりますが、御茶ノ水女子大学の学生が台湾でタクシー運転手から暴行を受け、殺害されるという事件がおきました。この方は小生の知人の知人であったため、強い衝撃を受けました。しかし、当時、「出会い」を求め、現地の人との「あたかなふれあい」を求めるために、日常ではありえない行動をその女子大生がとったのではないかということがマスコミで取りざたされました。そうした報道にもまた、大学生であった小生はショックをうけました。今回、山梨で発生した案件は、そうした「ふれあい」をもとめた結果でないと思われますが、「観光」や「旅」にはこうした不用意さがあること、また日本と台湾のように互いに警戒心が薄い関係では、それが生じがちであることは銘記しなくてはならないと思われます。
日本での凶悪犯罪は、日々台湾の新聞で報道されています。今回の事件で日本の安全神話の崩壊が台湾でも盛んに報道されました。しかし、山梨県の当該地域を忌避する動きがあるにせよ、日本への観光という観点ではそこまで悲観論は出ないでしょう。また、日本と台湾の関係全体に与える影響も一件だけでは多くないでしょう。しかし、これが数件重なると、「日本人がきても話さないように」、「夜は絶対にホテルから外出しないように」ということになるものと思われます。こうなれば、両国の国民レヴェルの外交に影響を与えていくでしょう。
<万里の長城>
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万里の長城は宇宙から見えないと最近発表された気がします。どうでもいいことですが・・・(7月6日分、学部三年) |
⇒そうですね。ですから「見えるという話がありますが」と授業で申し上げました。ただ、見える見えないについては、さまざまな条件(日照状況など)の結果のようにも思われ、まだ決着ではないものと思われます。
〈人名表記〉
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朝鮮・韓国系の人名は、いまでは朝鮮語読みされていますが、中国人名でそういった動きはないのですか。朝日新聞は中国語読みのふりがなを振っているようですが。(6月8日分、学部三年) |
⇒小生が学部生のころだったか、『しにか』(大修館書店)という雑誌の読者欄か何かで、小生とどなたかが論争をしたことがあります。あのころ、漢字の音読よみと、中国語的な読みと、あと「読み慣わし」(上海=しゃんはい、南京=なんきん、北京=ぺきん・・・実際にはペキン、ナンキンなどは、明代の南方漢和の名残とされ、中国語ではペキンともナンキンとも言わない)が混合して使用されていました。この「読み慣わし」について触れておくと、中国語のよみは、日本の生活のあちこちに見られ、たとえばお酒をのみチョコ=zhukou、暖簾=nuanlian、チンプン・カンプン=tingbudong kanbudong なども中国語の音がそのまま日本語になっている例です。北海道で使用されているザンキも、炸鶏(あげた鶏)zajiと思われます。あと、リンチも陵遅lingchiですね。面白いのは、学生運動をした人たちは、友人をポンユウ=朋友pengyouと言ったりすることです。これは左派運動の名残ですね。さて、表記の件ですが、次第に中国語をカタカナ表記する傾向が強まってきています。しかし、中国側が一切日本語よみでそれを書かないという事情があります。そもそも、JAPANとて、中国語の日本Riben(というよりも、福建語におけるジップン、広東語のヤップン)などが伝わったものですから、中国が日本を中国語よみするのをいけないと言い出せば、JAPANもいけないということになりますから、批判じたいがナンセンスになります。どうしたものでしょう。表記を含め、呼称というものは、相当にデリケートです。韓国への呼称についても、人名・地名までは、韓国語的カタカナ読みにしていますが、韓国は「かんこく」と読んでいます。中国の場合、これを貫徹するとなると、北京は「べいちん」、南京は「なんちん」ということになり、ハルピンも「はあぴ(び)ん」となりましょう。アモイなどは「しゃあめん」と大変更です。広東も「かんとん」ではなく、「ぐあんどん」、天津も「てんしん」ではなく、「ティェンチン」となります。上海、寧波、青島はかろうじて、「しゃんはい」、「にんぽー」、「ちんたお」のままで大丈夫と思われます。こうしたものを一斉に中国語よみ(まずこれのカタカナ読みの方法の統一が必要ですが)にした場合、それは単純に音読みを中国語発音にすればいいということではない問題が付随しています。それが韓国語よりも難しいところかもしれません。
<北海道観光に来ている外国人>
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札幌、あるいは北海道に、ここ数年中国の方がたくさん観光に来ているのを見かけますが、中国語を履修している友達の話によると、「あれは何語かわからない」とのことでした。何圏の方が多く日本に多くツアー旅行に来ているのでしょうか。(7月6日分、学部三年) |
⇒中国語を第二外国語で履修している程度では、ほとんど聞き取れないものと思います。特に、中国語の共通語の「なまり」から、どの地域の人かなどと推測するのは不可能でしょうね。最近は中国人も増えていますが、共通語を話しているのはほとんど台湾人です。ただし、思いっきり南方訛りの共通語です。北方訛りの中国語を話している人も少しずつ増えていますが、まだまだ台湾人が優勢です。他方、台湾人が台湾語を話しているケースも多いので、その場合、いくら語学で中国語を勉強していても、何語かの判別はつかないでしょう。台湾で暮らせば、聞き取れないにしても、台湾語であることはすぐにわかるようになりますが。あとは、香港人が話している広東語(あるいは香港語)です。この三種ですね。ときどき、きつい東北訛りや上海語を耳にしますが・・・北海道に観光で来る外国人で言えば、いまのところ韓国人と台湾人が一位を争っていて、ついで香港人となります。