アジア政治論第5回講義〈質問表への回答〉

川島真 shin@juris.hokudai.ac.jp

 

1.講義の方法などへの質問・要望

 

2.内容について

〈友好団体〉

授業の内容ではなく冒頭でお話されたことに関する質問ですが、日中関係における非公式の外交関係の役割、意義について、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。日中友好七団体は、どのような人たちが運営しているのか(官民学産)、それらは完全な民間ファクターと看做せるのか。今日のお話では、最近中国においてこれらの役割が注目されているようですが、実際にどのような効果が期待できるのでしょうか(政府間に問題がある場合、このような非公式ファクターの役割が大きくなるのかなと思い)(教育実習のため、二週間ほど欠席します)(他学部博士課程)

→この点を理解するには、まず現代中国の外交の基本スタイルを理解する必要があります。これは特に共産党が政権をとってから用いられた方法で、まだ世界で政府承認をうけていない時代にもっとも機能したものですが、世界各国に「友好人士」をつくり、また「友好団体」をつくることによって、そこを軸に「日中友好運動」を当該国でおこし、それを圧力として中華民国ではなく、中華人民共和国を承認させようとしたわけです。他方、日本では1972年に国交が「正常化」しますが、そのように政府承認がおこなわれたあとでも、政府に対する一種の圧力団体として機能させようとしてきたわけです。このような「友好運動」を指揮指導してきたのは、必ずしも中国外交部ではありません。中聯部、統戦部などといった共産党の対外工作機関であることが多かったと思います。日本側は、もちろん外務省や自民党がそのまま書簡にしているわけではないのですが、これらの団体の役員には政財学界の錚々たる人々が名を連ねます。議員であれば日中友好議員連盟のメンバーやOBが目立ちます。7団体には、日本国際貿易促進協会、日中友好議員連盟、社団法人日中友好協会、日中文化交流協会、日中経済協会、日中協会、日中友好会館などがあります。これに対する中国側(北京)の機関は、対外友好協会、中日友好協会、国際貿易促進委員会、中華全国青年連合会、中華全国婦女連合会、中華全国総工会などになります。友好団体の代表などは、日本の閣僚級でも会うのが難しい胡錦濤主席らと比較的簡単に会うことができるなど、「優遇」されるわけです。しかし、この「友好」という方法は限界に来ています。その原因は多元的ですが、第一に、中国の対外交流が限定的であった時期にはこのような手法が友好であったものの、これほど対外開放が進むと中国政府と「友好」であることを表現するインセンティブが低下してしまったことがあります。かつては「友好商社」でなければODAは受注できなかったし、そういうところが対中貿易で大きな利潤をあげられましたが、現在は違います。第二に、日本国内で日中友好を推進していた社会党系の諸団体および自民党橋本派が、それぞれ1990年代、小泉政権下で急速に失速し、影響力を失ってきています。おっしゃられるように非公式ファクターは重要と成ります。しかし、それが「友好」という路線であるかどうかは相当難しい問題だと思います。

 

 

 

〈暗号について〉

常識的な質問なら申し訳ありませんが、暗号について質問です。例えば、日本と中国の間で沙K制された暗号を解読するとき、両国とも同じ解読表を持つならば(持たなくても)、どちらの言語に約すのですか?(他学部三年)

⇒国家同士が暗号を共有するとすれば、それは国際機関の業務のやりとりをするときくらいでしょうか。基本的に暗号は出先の在外公館がもっていて、それを受領してから現地語に翻訳して提出するわけです。文書に使用する言語ですが、日本から中国へなら日本語、中国語が併用され、時に英語が使用されているはずです。

 

〈左翼的論者の議論〉

左翼的論者が対アジア外交に関して展開する、従属的とも受け取れる論は、現在の社会実態及び過去の歴史的経緯から見て、どの程度合理的なのでしょうか。(学部四年)

⇒これは面白い問題ですね。授業で取り上げましょう。