北海学園大学 国際地域政治研究「中国・台湾」レポート講評
川島 真
【レポート評価と成績の対応関係】
レポート表紙にある評価A、A´、B゜ → 成績評価 A
レポート B、B´ → 成績B
レポート C゜、C、C´ → 成績C
今回、レポートを出した人にD評価はいません。提出した人全員に単位を出します。
成績分布は以下のとおり。成績評価A=11名、成績評価B=24名、成績評価C=11名。
⇒ 記入ミスもありえます。問題があると思われた方は、北海学園法学部の教務係を通じて川島までご連絡ください。また今後の勉強などで相談があれば、直接川島までご連絡ください。shin@juris.hokudai.ac.jp です。
【総合講評】
レポートを読みました。きっちりと自分の意見を展開できている、なかなか良くできている答案もあれば、何かの丸写しであることがはっきりしている、読むのが苦痛でしかないものもありました。また自分で考えながらも、誤解に満ちてしまっているもの、事実認識に相当大きな問題があるものがありました。もどかしかったのは、せっかく色々調べたりしながら、結論になると萎んでしまう、穏当な事をいって、おさめようとする答案でした。自分で出した回答に疑問をもち、今一度考えるということがなかなか難しいようです。このあたりができないと、いつまでも調べて、何となく「物知り」になって納得するだけで、問題に切り込めなくなってしまいます。
評価については、まずは以下のことを確認してください。(1)問題をよく読んでください。問題に書かれていることに正面から応えてください。本の内容をまとめて書評を、といわれたら、きちんとまとめて評してください。そしてどこからどこまでがまとめで、どこから書評なのか、しっかり書いてください。また、改革開放前後の変容過程と聞かれたら、前はどうで、後はどうだというように、はっきりと書いてください。そうしないと応えたことになりません。他方、(2)今一度、レポート提出の要件も見てください。40×30字の印字、また用紙はA4に指定したはずです。本来なら、この指定から外れた答案は0点です。さらに、(3)評価方法についても、今一度、見てみてほしいと思います。授業で配布したものには以下の諸点が書いてあったはずです。
@上記の七問のうち、何を選ぶかは評価の対象としない。
A 文章内容、論理構成力、オリジナリティ、文章力などを評価対象とする。
B 授業内容をふまえること。
C 学生同志での書き写しを含めた「剽窃・ひょうせつ」行為については、厳しく評価します。本などから引用する場合には、きちんと典拠を示すこと。
D これらができていれば、不可を出すことは無い。
これをしっかり読んでから取り組んでほしかったと思います。驚いたことは、ABCがなかなか答案にきっちり反映されていなかったことですね。特に西部大開発の部分については、引用、あるいは丸写しでありながら、どこからどこまでが引用か明示せず、自分の考えのように見えることも基本的に写しであるような印象を受ける答案が多かったように思います。オリジナリティがなかったり、引用するにしても、一つの文献を丸写したりするようなレポートばかりで、かつ殆どの人が同じものから引用するので、金太郎飴のようなレポートを読む作業になった部分がありました。そして、ほかの人の文章をあたかも自分の考え、のようにして記している答案については、強い疑問を感じました。書きながら、「なぜ」「どのように」という既述がうすくなっていることに思いを致してほしかったと思います。
文章力については、細かいことは申し上げませんが、「デス・マス」と「デアル」を一つの文章の中で区別無く混用することは絶対に避けてください。また、主述の不対応、あまりに多い漢字ミスなどもありました。ご注意ください。
評価はだいぶあまくしました。実際にはD=不可の答案もCとしました。Cの人で「本当はD」と書かれている人は、注意してください。他方、Aがついている人はしっかりと問いに応えているものです。以下が各問に関する答案です。
【問題別講評】
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@政治を地域研究的に捉えることの意義を、中国を例に答えなさい。 |
→回答者はいませんでした。
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A中国における地域設定を、農業、工業、社会、社会状況などさまざまな側面から検討し、地図を添付して地域設定をおこないなさい。 |
→この問題に意欲的にも取り組んだ方は一名でした。しかし、中国における「地域設定」(たとえば、農業では沿岸部と内陸部で格差があり、さらに南北で違いがあり、といったように区分していく)を自分でするというよりも、都市と農村の違いなどを漠然と記すにとどまってしまいました。残念です。問題の意図が汲み取れなかったようです。この問題は、授業でもっとも多く取り上げたポイントだけに残念です。
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B西部大開発について調べ、それが中国の経済発展や開発のどのような問題を孕んでいるか答えなさい。 |
→西部大開発の内容から中国の「改革開放」のあり方を照射し、そこにさまざまな問題性を見出し、そこから今後の中国や日中関係、民族問題などを考える。また中国における「地域」問題にも踏み込むことが期待された問題。
ほとんどの人がウェブ上、あるいは『中国21』の丸写し。オリジナリティもなく、問題点指摘までもが、「写し」。「調べる」ことについては、文献を引用することは当然だが、「本」や「ウェブサイト」というものを、きちんと比較検討して、より確かな情報を探すとか、異同について調べるとか、そういった努力をしてほしかった。みな、ウェブ上にある(日本大使館の)藤田法子氏の文献をそのまま写すだけであった(これは少し古いものなので、それを丸写ししても、内容が妥当とは言えない)。文章を少し変えても、書かれている内容、項目などが同じなので、すぐにわかる。そして、「調べる」部分と「問題点」の部分が悪く、ひたすら一つの文献を写して「調べた」ことにし、最後に少し「問題をあげる」タイプの答案が目立った。内容的には、授業で協調したはずの、ここ2年間の東北重視との関連性、ウイグルの独立運動との関係、などをしっかりおさえたものが多くなかったことが気がかりである。
ほかの問題を選択した学生に比べて、「丸写し」の傾向が強かったこともあり、A評価は出さなかった。そのかわり、完全に内容をはずしてしまう答案は多くなかった。
(選択者12名、B+=3名、B=7名、B−=1名、C=1名)
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C日中関係における問題について、具体的な問題をとりあげ、その原因、経緯、解決方法を示しなさい。 |
→この問題の選択者は17名。「自分で考える」ということについては、よくできていた。評価が高くなっているのは、自分なりに、いろいろな材料を集めて思考をめぐらしているタイプの答案である。何となく穏当な結論を出し、それでおしまいという答案ではBしか出さなかった。このほか、引用が不明であったり、解決方法をきっちり考えていないものは、要件を満たしていないとしてCにした。自己宣伝に終始した答案も同様。また、問題を羅列してしまい、具体的な問題の原因、経緯、解決方法を示さなかったり、「今後は対話が必要」などといった思考停止的な解決方法をさらりと述べたものも評価が低くなっている。
問題としては靖国、ODAなどが多かった。靖国については、文化論に終始しても、日中が別々になるだけである。またこれまでの経緯をしっかりふまえないと、何がどこで行き詰ったのかということが見えてこない。ODAも、必要・不必要も大切だが、中国側の観点をいかにいれていくのか、または国際的な、国際機関的な観点などが必要。
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D中国における国家・社会関係について、興味を抱いた点をあげ、それについての新書を一冊とりあげ、その内容をまとめた上で、書評しなさい。 |
→何はともあれ、問いをしっかり読んでほしい。興味を抱いた点を上げ、それに見合う新書を一冊とりあげて、内容をまとめた上で、書評するのである。これができていなかればC以下になる。どこまでが本の紹介で、どこからが持論なのか。しっかりとわけてほしい。また、分量の意味で、書評は最低でも半分は必要。若林敬子の岩波新書『中国 人口大国のゆくえ』については、持論の部分で「一人っ子はわがままだからいけない」という見解を述べる答案が目立ったが、いかがなものか。では兄弟何人だと適正があり、男女比がどうだといいのか?また親が離婚していれば子供がおかしいとか、そういった家庭環境決定論に堕することにならないか。小皇帝の問題はあるが、それを「子供一人」というファクターだけから「わがまま」と説明することには無理があろう。また「子供を産むのが女性の幸せ」といわれても、それはその一つであり、その分だけ女性の社会進出が活発な中国をどのように見るかという課題を看過している。
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E台湾の状況について、台湾自身の状況、両岸関係、日台関係、アメリカの政策の四面に分けて検討し、自らの意見を加えなさい。 |
→この問題を選択した学生は5人。台湾に関する授業を十分にはできなかったものの、日常的に関心をもっていたためか、よく勉強していた答案が見られた。難点があるとすれば、四面のバランスが悪い事、四面が羅列されていて、関連性が述べられなかったことなどがある。あと、台湾の今後が「難しい」といったまとめで、思考を放棄するようなかたちになっているものもあった。他方、Cを出さざるを得ない部分もあった。たとえば、「台湾は中国共産党がつくったもの」、「清朝が倒れた後、中国では共産党が勢力を増し、その圧力に耐えられなれなくなった蒋介石率いる国民党は清朝の財産をもって台湾に逃れた」・・・これは何かの勘違いではないかと思われる記述に満ちている答案で、こうしたものは本来なら不可にしたいところであった。
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F中国の少数民族をひとつとりあげ、その状況を調べ、その改革開放以前・以後の民族としてのありかたの変容過程について述べ、そこに見える問題について解決方法を述べなさい。 |
→ウイグル、ミャオ、チベットについて取り上げた人がそれぞれ1名。きっと少数民族に関心があるのだろう。あり種の思い入れ、愛情に満ちた答案であった。しかし、問いをよく読んでほしい。あなたたちの思いを聞くための問題ではない。「改革開放以前、以後の民族としてのありかたの変容過程」の話である。すなわち、経済発展、ナショナリズム、一人っ子政策、西部大開発などといった改革開放後における少数民族の置かれた立場(たとえば観光への組み込み、ナショナリズムとの関連性など)についてしっかりと記述すべきで、祭りの事や、文化的な問題に、そこまで記述をはらわなくてもいいのである(無論、それが開発の中で破壊されるとか、観光のために固定化されるということならきわめて重要となる)。評価はB´などとしたが、それは甘めの答案と思ってほしい。