200677

公共政策大学院

 

12回 国際協力論(川島担当部)

shin@juris.hokudai.ac.jp

 

●ソフトパワーとして注目される文化交流、しかし・・・

  ジョセフ・ナイが1980年代に提起したソフトパワーという概念は、いまや国際社会における諸関係を説明する上で必要不可欠なタームになっている。しかし、ナイの著書Soft Power を一読した者なら誰でも気づくように、昨今の、特に日本での使用のされ方については大きな疑問符を呈せざるを得ない。ソフトパワーとは、軍事的、経済的な優位性を後ろ盾にして対外政策を展開しようとするパワーであるハードパワーに対置される概念で、相手を引き付け、理解を得て、共通の対話、秩序を形成をしていけるような、文化や理念、考え方に基づいて対外政策をおこなっていくパワーを指す。これは、ひとつの、そして重要なソフトパワーといえる「民主主義」や「人権」という理念や、概念化されたグローバリゼーションが国際社会において重要な要素となることを指摘すると同時に、ややもすれば軍事力を背景にした外交を展開しがちな新保守主義的な政権に対する批判ともなっている。ナイがアメリカのソフトパワーの低下を嘆いたのも、そうした背景がある。この考えは、積極的な軍事行動をとるテロリストがなぜ出現するのか、地球規模の諸問題がなぜ解決できないかという現実的な問題に対する、ひとつの分析でもある。しかし、日本では、だいぶ誤解されているという印象を受ける。経済にかわって日本が優位性を保てる資源として注目され、アニメやゲームなどの「ソフト」カルチャーの拡大が日本のソフトパワーの拡大と同義に使用されてしまっている。それだけに民主主義の理念がソフトパワーの一つといわれると違和感があるほどではないだろうか。日本のアニメが広がったり、日本語学習者が増加することが「日本のソフトパワー」の証しであるかのように言われるのは、ソフトパワーとしてはおかしなことである。文化の伝播や受容が「ソフトパワー」として位置づけられるとすれば、それは、その文化の伝播や受容において、ある種の価値や理念があわせて伝えられ、共有され、それによって既存の問題を解決し、共通の秩序を築いていけるようなケースである。相撲が公表を博したり、茶の湯が日本の伝統文化として注目を浴びるということと、ソフトパワーは直接的にはあまり関係がない。世界に広まる日本のアニメーションがソフトパワーの一つとして位置づけられはじめたころには、そこに何かしらの「価値」があるからだという前提があってのことで、それに「日の丸」をつけて、ある意味で経済同様の優位性を意識して、政府の推進する文化交流政策として押し出していくことが、ソフトパワー云々ではないのである。ソフトパワーとしての文化交流に求められているのは、日本が発信すべき価値、世界や地域と共有していくべき理念は何か、そしてそれが如何なる問題をどのように解決していく可能性があるのかということを吟味した上で、その「文化」なるものを精選し、意義付けをして発信することである。むろん、それが意図通りに伝わるわけではないし、先方の需要にもっとも適したものは、政治外交的意図とは別に経済的な論理で動くことになる。それだけに、価値や理念の意義付けが求められるのである。

 

●それでは、「文化交流」では何をするのか。

 外務省は以下のように説明する。http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/rinen/index.html 

 「文化は、政治、経済と並ぶわが国外交の重要な分野であり、その果たす役割は近年ますます大きくなっています。互いに異なる背景を持つ人々や文化の間の交流から生まれる相互理解は、国と国、人と人との信頼関係を育て友好関係を発達させていく上で、不可欠の要素です。また、様々な側面を持つ日本の姿を世界の人々に十分に理解してもらうことは、グローバル化した世界の中において我々日本人が国境を越えた活動を行い、世界の人々との交流をスムーズに進めていく上で、非常に重要といえます。
 政府は、このような視点から、文化の分野での交流や協力を多岐にわたり展開するとともに、民間団体の国際交流活動を積極的に支援しています。」

 ⇒そこまで明確なイメージはない。

  文化交流を外務省で担当する「文化交流部」の「文化交流部の施策概要」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/rinen/kokusai_1.html 

  は、平成13年から更新されていない。そこでは、以下のようなことが述べられている。

  「文化交流部は、19833月の臨調最終答申を受け、他の先進諸国に比して立ち後れの目立つ国際文化交流の飛躍的な活性化及び進展を目指し、19847月、情報文化局内の2つの課を改組して新たに誕生しました。その後、国際文化交流拡大の気運が高まる中で、1989年、1994年と2度にわたり総理懇談会の提言が出され、これを踏まえて予算の拡大及び事業の多角化が進められてきています。文化の分野における外交活動を担う文化交流部では、わが国の文化外交の方向性を定めるとともに、文化交流事業の実施機関である国際交流基金と連携しつつ、日本文化の海外への発信をはじめとする各種の文化交流事業を展開しています。また、世界各国に広がるわが国の大使館や総領事館では、外交活動の一環として、様々な日本文化紹介活動を実施しています。」

 ⇒これまで、文化交流は再三にわたり、「大切だ」、「推進すべきだ」と言われ、昨今では世論の支持も得ている。しかし、それが中々動いていっていない。それは何故か。

 

課題の整理 

 (1)そもそも何のためにするのか。目標、目的は何か。

⇒ ODAにも共通した課題。世界の普遍価値の追求か、国益重視か、現地主義か。

 (2)そして、文化とはそもそも何か。交流とは何か。何を発信するのか。

 (3)何がどうなれば成功なのか。評価はどうするのか。

 (4)担い手は誰なのか。国際組織、国家、自治体、民間、NGO、個人?

 (5)日本自身の国際化?、対内発信、外国文化の日本への紹介は?

 (6)国際標準との対応?ブリティッシュ・カウンシル、ゲーテ・インスティテュート、アメリカン・センター

 

●日本の文化交流の担い手

【中央政府】

 外務省所管 ⇒ 文化交流部系統 ⇒ 国際交流基金 

                          ⇒ あるいは文化無償、草の根交流 

         ⇒ 経済協力局系統 ⇒ JICAによる民主化支援、日本語教師派遣、日本センター建設、無償留学生、草の根交流

                       ⇒ JBICによる教育支援、有償資金型の短期留学

         ⇒ そのほかにユニセフ、ユネスコなどの国際組織を通じた交流がある 

 文部科学省所管 ⇒ 国費留学生、学術研究者の交流

             ⇒ スポーツ交流、青少年交流

 文化庁所管 ⇒ 「国語」をめぐる交流、文化財、伝統芸能などの交流

 そのほか中央省庁でも分散。

【地方政府】

 地方自治体 ⇒ 姉妹都市交流

 

●公共政策として見た場合、何がどのように実施されることが期待されているのか。

 

★例:平成1610月、内閣府実施「外交に関する世論調査」

5 文化交流

 (1) 文化交流で重点を置くべき分野

 諸外国との文化交流を進める上で,どの分野に重点を置くべきだと思うか聞いたところ,「スポーツ交流」を挙げた者の割合が27.6%,「青少年の交流」を挙げた者の割合が27.5%と高く,以下,「留学生の交流」(18.1%),「学者,芸術家,文化人などの交流」(17.5%),「現代日本の紹介(公演・展示・映像等を通じ,現代の日本の姿を海外に正しく伝える)」(15.3%)などの順となっている。なお,「わからない」と答えた者の割合は10.0%となっている。(複数回答,上位5項目)(図40
 性別に見ると,「スポーツ交流」,「青少年の交流」を挙げた者の割合は男性で高くなっている。
 年齢別に見ると,「スポーツ交流」を挙げた者の割合は30歳代で,「青少年の交流」を挙げた者の割合は50歳代で,それぞれ高くなっている。(表40参考表


 (2) 文化交流で重点を置くべき地域

 諸外国との文化交流を進める上で,どの地域の国々に重点を置くべきだと思うか聞いたところ,「北東アジア(韓国,中国,モンゴル)」を挙げた者の割合が44.0%と最も高く,以下,「東南アジア(タイ,インドネシアなど)」(22.2%),「北アメリカ(アメリカ,カナダ)」(22.1%),「西欧(フランス,イギリスなど)」(19.1%)などの順となっている。なお,「わからない」と答えた者の割合は13.3%となっている。(複数回答,上位4項目)
 平成1410月の調査結果と比較して見ると,「北アメリカ(アメリカ,カナダ)」(12.5%→22.1%)を挙げた者の割合が上昇している。(図41
 性別に見ると,「北東アジア(韓国,中国,モンゴル)」,「東南アジア(タイ,インドネシアなど)」,「北アメリカ(アメリカ,カナダ)」,「西欧(フランス,イギリスなど)」を挙げた者の割合は男性で高くなっている。(表41

 

★例:平成52月内閣府実施、国際文化交流に関する世論調査

 

調 査 の 概 要

  調査の目的
国際文化交流に対する国民の意識を調査し,今後の施策の参考とする。

  調査項目
(1)
国際文化交流の現状 (2)国際文化交流の意義 (3)国際文化交流の重点分野
(4)
日本文化の外国への紹介 (5)外国文化の日本への紹介 (6)国際文化交流の重点地域
(7)
日本の国際文化協力

  調査対象

(1) 母集団 全国20歳以上の者

(2) 標本数 5,000

(3) 抽出方法 層化2段無作為抽出法

 

  調査時期  平成5年2月27日~平成5年3月9日

  回収結果
(1)
有効回収数() 3,701人(74.0%)
(2)
調査不能数() 1,299人(26.0%)

調 査 票

〔国際文化交流の現状〕はじめに,国際文化交流の現状についてお伺いします。

Q1 

〔回答票1〕 日本は諸外国との間で,このような様々な文化交流を行っていますが,あなたは,現在,日本と諸外国との文化交流は,どの程度行われていると思いますか。この中から1つだけあげてください。[・学者,芸術家,文化人などの交流・青少年の交流・留学生の交流・スポーツの交流・日本の伝統文化(歌舞伎,能,狂言,生け花,茶道など)の紹介・現代日本の紹介(公演,展示会,映画などにより現代日本の姿を正しく伝える)・海外への日本語の普及・海外における日本研究の振興・外国の文化の日本への紹介]

 

( 6.1)

()

十分に行われている

(40.8)

()

まあ十分に行われている

(33.5)

()

あまり十分には行われていない

( 6.2)

()

十分には行われていない

(13.4)

 

わからない


〔国際文化交流の意義〕次に,国際文化交流の意義についてお伺いします。

Q2 

〔回答票2〕 あなたは,日本と諸外国との文化交流を進めることは,どのような意義があるとお考えですか。この中からいくつでもあげてください。(M.A.)

 

(53.6)

()

日本と諸外国との間の相互理解や信頼関係が深まり,国際関係の安定につながる

(38.8)

()

異なる文化がお互いに刺激し合うことにより,より豊かな文化が創造され,世界の文化の向上につながる

(28.9)

()

世界各国で高まりつつある様々な日本への関心に応えることができる

(35.0)

()

日本の国際化が進み,日本が国際的に開かれた豊かな文化を持つ国に発展できる

( 0.2)

 

その他

( 9.2)

 

わからない

(M.T.=165.8

 


〔国際文化交流の重点分野〕次に,国際文化交流の重点分野についてお伺いします。

Q3 

〔回答票3〕 あなたは,日本と諸外国との文化交流を進める上で,どのような分野に重点を置くべきだと思いますか。この中から2つまであげてください。(2M.A.)

 

(16.5)

()

学者,芸術家,文化人などの交流

(35.4)

()

青少年の交流

(19.7)

()

留学生の交流

(22.9)

()

スポーツの交流

(21.0)

()

日本の伝統文化(歌舞伎,能,狂言,生け花,茶道など)の紹介

(23.3)

()

現代日本の紹介(公演,展示会,映画などにより現代日本の姿を正しく伝える)

(12.2)

()

海外への日本語の普及

(10.6)

()

海外における日本研究の振興

(16.1)

()

外国の文化の日本への紹介

( 0.2)

 

その他

( 5.3)

 

わからない

(M.T.=183.2

 


〔諸外国の日本文化に対する理解度〕次に,日本文化の外国への紹介と外国文化の日本への紹介についてお伺いします。

Q4 

〔回答票4〕 あなたは,日本文化が,諸外国にどの程度理解されていると思いますか。この中から1つだけあげてください。

 

( 1.3)

()

十分理解されている

(32.8)

()

ある程度理解されている

(51.1)

()

あまり理解されていない

( 9.8)

()

ほとんど理解されていない

( 0.0)

 

その他

( 5.1)

 

わからない


〔日本文化の外国への紹介〕

Q5 

〔回答票5〕 あなたは,今後,日本が,諸外国に対して日本の文化を紹介する場合,どのような分野に重点を置くべきだと思いますか。この中から1つだけあげてください。

 

(10.2)

()

古典芸能(歌舞伎,能,狂言など)

( 8.5)

()

伝統文化(生け花,茶道など)

(13.4)

()

スポーツ(相撲,武道など)

( 4.0)

()

現代文化(歌謡曲,映画など)

(59.4)

()

日常の生活様式(風俗,習慣,行事など)

( 0.2)

 

その他

( 4.4)

 

わからない


〔外国文化への関心〕

Q6 

〔回答票6〕 あなたは,外国の文化のどのような分野に関心がありますか。この中からいくつでもあげてください。(M.A.)

 

(45.1)

()

歴史的な文化遺産

(21.8)

()

絵画,工芸などの美術

(23.7)

()

音楽,舞踊,演劇などの舞台芸術

(10.8)

()

文学

(21.3)

()

学術,科学技術

(23.0)

()

教育

(22.5)

()

スポーツ

( 7.4)

()

宗教

(48.9)

()

日常の生活様式(風俗,習慣,行事など)

( 0.2)

 

その他

( 5.9)

 

わからない

(M.T.=230.5

 


〔外国文化の日本への紹介〕

Q7 

〔回答票7〕 あなたは,今後,外国の文化が日本に紹介される場合,どのような文化が紹介されるのが望ましいと思いますか。この中から1つだけあげてください。

 

(17.3)

()

異国情緒の強い,伝統的・民族的なもの

(12.4)

()

芸術性が高いもの

(44.1)

()

風俗,習慣,行事など日常生活に密着したもの

(20.8)

()

日本の文化と共通性のあるもの

( 0.2)

 

その他

( 5.2)

 

わからない


〔国際文化交流の重点地域〕次に,国際文化交流の重点地域についてお伺いします。

Q8 

〔回答票8〕 あなたは,日本と諸外国との文化交流を進める上で,どの地域の国々との交流に,最も重点を置くべきだと思いますか。この中から1つだけあげてください。

 

(34.3)

()

東アジア(韓国,中国など)

→SQaへ

( 8.3)

()

東南アジア(タイ,インドネシア,マレイシアなど)

→SQaへ

( 0.9)

()

南西アジア(インド,パキスタン,キルギスタンなど)

→SQaへ

( 3.2)

()

オセアニア(オーストラリア,ニュージーランド,南太平洋諸国)

→Q9へ

( 2.4)

()

中近東(イラン,エジプト,サウディ・アラビアなど)

→Q9へ

( 0.7)

()

アフリカ

→Q9へ

( 2.8)

()

ロシア,東ヨーロッパ(チェコ,ポーランド,ウクライナなど)

→SQbへ

( 6.5)

()

西ヨーロッパ(フランス,スウェーデンなど)

→SQcへ

( 6.6)

()

北アメリカ

→SQd

( 0.4)

()

ラテンアメリカ

→Q9へ

(26.6)

()

どの地域とも同じように進める

→Q9へ

( 7.3)

 

わからない

→Q9へ


(Q8で(ア)東アジア,(イ)東南アジア,(ウ)南西アジアのいずれかを答えた者に)

SQa 

〔回答票9〕 それは,どうしてでしょうか。この中から1つだけあげてください。
N=1,611

 

(15.9)

()

もっとも親しみを感じるから

→Q9へ

(52.0)

()

日本はアジアの一員であり,地理的にも近いから

→Q9へ

(17.5)

()

歴史的なつながりが深いから

→Q9へ

( 3.9)

()

文化的に共通するところが多いから

→Q9へ

( 3.3)

()

古代から文化が栄え,貴重な文化遺産がたくさんあるから

→Q9へ

( 6.6)

()

日本に対する理解が十分でないから

→Q9へ

( 0.6)

 

その他

→Q9へ

( 0.2)

 

わからない

→Q9へ


(Q8で(キ)ロシア,東ヨーロッパと答えた者に)

SQb 

〔回答票10〕 それは,どうしてでしょうか。この中から1つだけあげてください。
N=104

 

( 7.7)

()

もっとも親しみを感じるから

→Q9へ

( 6.7)

()

古典音楽などの豊かな芸術文化を持つ地域だから

→Q9へ

(42.3)

()

これまで,他の地域に比べて文化交流が少なかったから

→Q9へ

( 9.6)

()

日本は,この地域の自由化,民主化に向けて,文化面で貢献すべきだから

→Q9へ

(29.8)

()

日本に対する理解が十分でないから

→Q9へ

( -)

 

その他

→Q9へ

( 3.8)

 

わからない

→Q9へ


(Q8で(ク)西ヨーロッパと答えた者に)

SQc 

〔回答票11〕 それは,どうしてでしょうか。この中から1つだけあげてください。
N=242

 

(10.7)

()

もっとも親しみを感じるから

→Q9へ

(44.2)

()

芸術,ファッションなどの文化が豊かだから

→Q9へ

(26.0)

()

古代から文化が栄え,貴重な文化遺産がたくさんあるから

→Q9へ

( 6.6)

()

これまで,他の地域に比べて文化交流が少なかったから

→Q9へ

(11.2)

()

日本に対する理解が十分でないから

→Q9へ

( 0.4)

 

その他

→Q9へ

( 0.8)

 

わからない

→Q9へ


(Q8で(ケ)北アメリカと答えた者に)

SQd 

〔回答票12〕 それは,どうしてでしょうか。この中から1つだけあげてください。
N=246

 

(18.7)

()

もっとも親しみを感じるから

→Q9へ

( 4.5)

()

芸術,ファッションなどの文化が豊かだから

→Q9へ

( 8.1)

()

自由な雰囲気があり,交流を進めやすいから

→Q9へ

(60.2)

()

日米関係は重要であり,文化面でも相互理解と信頼関係を深めることが大切であるから

→Q9へ

( 5.7)

()

日本に対する理解が十分でないから

→Q9へ

( 0.8)

 

その他

→Q9へ

( 2.0)

 

わからない

→Q9へ


〔日本の国際文化協力〕最後に,日本の国際文化協力についてお伺いします。

Q9 

〔回答票13〕 あなたは,諸外国の文化の発展に協力するために,日本は,どのようなことを行うべきだと思いますか。この中から1つだけあげてください。

 

( 9.3)

()

日本の芸術性の高い文化を世界に広める

(12.6)

()

日本の大衆的な文化を世界に広める

(42.3)

()

諸外国との人物交流を拡大して,人材の育成を支援する

(10.3)

()

文化遺産の保存・修復などの文化協力を進める

(17.8)

()

諸外国の文化・教育の発展のための支援を行う

( 0.1)

 

その他

( 7.4)

 

わからない



F4 

〔回答票14〕 〔海外経験〕あなたは,外国に行ったことがありますか,ありませんか。この中ではどうでしょうか。

 

( 3.6)

()

外国(1つの国)に3か月以上住んだことがある

(33.5)

()

外国に行ったことがある

(62.9)

()

外国に行ったことはない

 

 

新しい時代の国際文化交流(平成6年6月)
「国際文化交流に関する懇談会」
(細川総理の諮問に応じるかたちで1994年から組織される)
 
               目次  

はじめに                                      
(特) 今、なぜ国際文化交流か-新しい時代への対応         
1.国際環境の大きな変化                           
2.国際社会へのより積極的な貢献                     
.日本社会と日本人の国際化                        
(監) 国際文化交流の飛躍的推進を目指して-実施体制と基盤の強化
1.民間と地方の活力を生かす交流-国民一人一人が担い手       
2.国際文化交流予算の大幅な拡充                        
3.国際文化交流でも規制緩和                   
(企) 新しい時代が求めている国際文化交流活動とは    
1.アジア・太平洋地域の未来を作り上げる交流        
2.未来志向の交流の推進                     
3.対外的な文化、学術活動の活発化                
4.日本理解の飛躍的増進                     
5.国際文化交流を通じての国際貢献                
6.世界の豊かな文化の発展に寄与                 
おわりに                             
 

はじめに

 

 近年、国際情勢や国内状況が大きく変わる中で、我が国の国際文化交流の現状と、その将来の方向につき検討してほしいとの総理からの要請を受け、当懇談会は昨年10月に第一回目の会合を開き、その後4回にわたる懇談会及び6回の分科会を開いて、この極めて重要な問題について真剣な討議を重ねた。さらに、国内外の関係機関・団体や海外の有識者からのヒアリングを行うとともに、一部委員による東南アジアへの海外視察も実施した。

 この報告は、このような討議・検討の結果を取りまとめたものであり、これが今後の我が国の国際文化交流の施策に反映されることを強く希望する。また、これを一つのきっかけに、国民一人一人の国際文化交流活動がいよいよ活発に行われることを期待する。

 

 ().   今、なぜ国際文化交流か-新しい時代への対応

 

 国際文化交流の重要性は、これまでにも何度となく論じられてきた。それにもかかわらず、今ここでなぜ改めてこの課題を取り上げるのか。それは、この数年来の国際環境と国内情勢の大きな変動に伴い、日本にとって、国際文化交流の重要性と緊急性が著しく高まり、この新しい時代における国際文化交流の進め方についての再検討が不可欠になってきたからである。

 

1. 国際環境の大きな変化

 

()冷戦の終焉は国家間の関係を複雑なものにした。とりわけ、イデオロギー的な対立が希薄になった今、日本が「西側」に属する諸国とこれまで以上に建設的な関係を維持するには、格段の努力を重ねる必要がある。

    共通の利益や共通の価値観を認識し、増進させる国際文化交流の努力が、建設的な対外関係の維持、発展のために、不可欠の条件となってきている。

() 冷戦時代の国家間のイデオロギーに基づく対立に代わって、民族や文化の違いに根ざす問題が顕在化し、深刻化してきた。このため、互いの文化を理解し、尊重し合う国際理解増進の活動は、今後の世界の共存のためにこれまで以上に強く求められている。

() 経済を中心とする国家間及び国民同士の相互依存関係が急激に増大してきた。たとえば、この10年間に日本の対外直接投資の累積額は7.3倍に、貿易額はドル・ベースで約2倍になった。しかし、経済的な相互依存関係の深まりは、それぞれの国に経済的利益をもたらす一方、ややもすると国家間の摩擦が起こりやすい状況をもたらす。経済関係の進展に見合った相互の文化理解や人的なつながりを強力に促進しない限り、友好的な対外関係を長期的に発展させることは困難である

()  東西対立の終焉と相互依存関係の深まりとともに、環境問題、難民問題等の地球的ともいうべき課題が深刻化してきている。旧社会主義諸国等の市場経済化への支援も重要な課題である。これらの課題に対する国際協力を通じての取組みが日本にいよいよ強く求められ、そのための交流活動の重要性が一段と大きくなった。

()  上に述べたような新しくかつ緊急な内外の課題の解決のためには、政治的、経済的な面での努力ももとより重要であろう。だが、長期の展望に立つ国際文化交流の活動こそ、そのためのもっとも有効な、究極の鍵となりうるものである。国際文化交流とは、長期間の継続的な努力を通じてはじめて効果を生じる。だからこそ、今から本格的に取り組んでいかなければならない。危機的状況になってからでは間に合わない。現在の内外の情勢を長い広い視野で見るならば、我が国が今後国際社会で存続し繁栄していくためには、世界規模での文化交流に、今こそより真剣かつ徹底した態度で取り組んでいかなければならない。

 

2. 国際社会へのより積極的な貢献

 

() 日本の経済力が世界のGNPの15%を占めるに至った結果、日本の国際社会における存在はもっぱら経済面を中心にとらえられがちである。その趨勢のなかで、我が国は経済面以外での対外的かかわり合いを一段と深め、さらにバランスのとれた国際社会との関係を作り上げていくことが最大の急務となっている。文化交流を通じて、「顔の見える日本」として諸外国との関係を作り上げることが、日本が国際社会に理解され、評価されるための条件であり、新時代の国際秩序構築への貢献にもつながる。

() 数年前我が国政府は、国際協力の三本柱の一つとして、「国際文化交流の強化」を提唱した。その後、大きな経済力をもつ日本の国際的貢献への期待は一層高まりつつあるが、先に述べた国際政治の変化を背景に、上述の地球的規模の課題の解決など、文化、学術面における日本の貢献はこれまで以上に重要になってきている。

     我が国が、国際的責任を十分遂行していくことの一翼としても、文化交流を通じての国際貢献を一段と拡充することが不可欠となったのである。

 

3. 日本社会と日本人の国際化

() 国際的な相互依存関係の進展は日本と世界とのかかわり合いをさらに幅広くし、さらに深めることとなった。たとえば、日本企業の海外での活動が増えるにつれて、さらに多くの日本人従業員とその家族が諸外国の地域社会で生活するようになり、海外に住む日本人の数は1993年には5年前に比べ約24%増の68万人となっている。一方、日本に滞在する外国人は128万人で、日本の人口の1%を越すに至った。

 このように日本人が外国人と直接ふれあい、かかわり合う機会が急激に増えるにつれて、日本の社会の在り方自体が、国際社会にいろいろな形で影響を与えるようになってきた。我が国の社会の仕組みそのものと私達国民の意識をさらに大胆に外に開かれたものにして、外国の人達を受け入れ、外国の文化と価値観を尊重することが必要になったのである。

() 他方、国際文化交流が、相互理解を促進させるだけでなく、日本人のものの考え方と日本の社会制度の国際化に大きな役割を果たすことは、多くの地域社会でこれまで以上に広く認識されるようになってきている。相互依存関係が深まった国際社会では、一国の内と外との差違や距離が、一般に想像される以上に小さくなり、それだけに、国際交流のさらなる進展にさらに多くの国民が直接参加することが要請されている。

 国民一人一人の参加する国際交流が、日本の国際化にとってなくてはならない時代となったのである。

 

().  国際文化交流の飛躍的推進を目指して-実施体制と基盤の強化  

 新しい時代の新しい必要にこたえて国際文化交流を推進していくうえで、そのための実施体制と基盤の一層の強化が極めて重要である。交流のための様々の組織を強化しなければならない。交流に参加し、交流の担い手になる人材も育成せねばならない。さらに資金が重要であることは言うまでもない。これまで国際文化交流の重要性が叫ばれても、

 ややもするとかけ声だけに終わる傾向があったのは、このような基礎的条件の整備に十分な配慮が払われなかったからと言えよう。これまで以上に幅広い交流活動を推進する必要性が増大しているだけに、実施体制と基盤の強化は目下最大の急務である。

 

1. 民間と地方の活力を生かす交流-国民一人一人が担い手

 

 新しい時代の国際社会の特徴の一つは、国と国とのつながりの他に、地方公共団体の姉妹都市関係等による交流が増大し、民間財団、教育・研究機関、NGO等の民間組織、企業、個人など多様なレベルでの国際協力関係が広がってきていることである。まさに国民一人一人が担い手となるような国際交流の推進が必要になってきている。だが現状では、このような国際的な交流や協力のネットワークに日本は必ずしも十分に参加していない。これは、日本の民間組織の発達と整備が遅れているためである。地方の組織、NGO等を中心として、発展の機運が強まっているだけに、以下のような方策により一層の促進が図られるべきである。政府、地方公共団体、民間組織、企業、個人がそれぞれの長所を生かし、役割を分担し、官民の協調を推進し、我が国全体としての対外交流をさらに活発に、より効果的なものにすべきことはいうまでもない。

 

() 我が国の国際文化交流活動の強化のため、この分野における企業・個人等からの寄付に対する税制上の優遇措置については、例えば、今後も適切な公益法人を特定公益増進法人としていくこと、特定公益増進法人の現状についての情報提供をさらに進めることなど、その積極的な活用と円滑な運用により、民間資金をより一層活用できるようにする。

() 民間組織が国際的な交流や協力のネットワークに参加することを促進するため、政府、政府関係機関等は、人材育成、情報提供等の面から、その活動を積極的に支援する。

() 近年、地方において、地方公共団体、「地域国際化協会」をはじめとする官民協力による組織、あるいは草の根の交流を進める民間組織等が活発に活動するようになってきており、このような国際交流の新しい担い手を一層強化するために積極的な支援の諸方策を講じる。

 また、公益法人の設立許可の基準等に関する情報公開をさらに進めることなどにより、適切な民間組織の法人格取得手続等の円滑な運用を図る。

() 地方公共団体や民間の国際文化交流に携わる人材を育成するため、研修の機会を充実させ、国の各種機関等との人事交流などを強化する。

 

2. 国際文化交流予算の大幅な拡充

 

 国際交流基金や日本学術振興会は、政府の国際文化交流事業の主要部分を担い、近年着実にその活動が拡充されてきているが、欧米の同種の機関に比べ、事業規模等においてなお大きな隔たりがある。今後、交流活動の新しい需要にこたえるために、これらの機関は、一層の事業の拡大の必要に迫られている。また、国際交流活動の多様化にこたえて民間や地方の交流活動が活発化するなかで、これらの組織に対する公的助成のなかだちとしての役割も増大しつつある。

 また、国家予算に占める国際文化交流関係予算の割合は0.2%程度であり、今後もこれの充実に努め、文化面での交流・協力を拡充することが重要である。

 

() 国際交流基金及び日本学術振興会については、近年その事業の着実な拡充が図られてきたが、いまだ十分とはいえない点も見受けられる。したがって、21世紀初頭には、その事業規模が倍増され、実施体制も拡充・強化されることが期待される。このような観点からも、国際交流基金に民間からの出えん金制度の導入を図る等の方策を鋭意検討する。

() 文化面における国際協力を強化するために、我が国のODAを文化交流にも積極的に活用する

 

3. 国際文化交流でも規制緩和

 

 国際文化交流をより円滑に進める上で、資金面や人材の育成面以外でも政府として行い得ることは多々ある。例えば、学者、研究者、文化人等が外国から日本に来たり日本から外国へ渡航する際に、手続上の煩雑さがまだ多く残っており、日本が文化面においても閉鎖的だという印象を外国に与えている。また、いろいろの理由があるにしても、欧米先進国との間では、日本から出かける留学生、研究者の数が日本に来るこれらの人たちの数を大きく上回っていて、これが国際文化交流の上でも不均衡があるとの印象を与えている。

 日本への関心が高まり、日本に来て活動することを望む外国の個人や組織がいよいよ多くなるなかで、可能な限り従来の規制を緩和し、交流の円滑化を図るべきである。また、情報の交流を推進する上で、情報・通信分野の諸活動の活発な展開がその基盤となるので、そのための制度の整備等を進めることが望まれる。

 

() 我が国の査証取得等入国までの審査手続に長時間を要することがあること、申請のために個別の身元保証人を必要とすることなどの不満がある。したがって、国際文化交流関係者については、一層迅速かつ適切な審査が行われるよう、手続の簡素化、身元保証人制度の運用の改善、審査体制等につき所要の整備を図る。

() 海外の交流団体が日本で活動する場合、法人格を得ることが難しいなど種々の事情から、円滑な活動が困難になっている場合がある。今後とも、日本との交流を推進する海外の国際文化交流の担い手が増えることが予想されるので、その改善策を検討する。

 

(). 新しい時代が求めている国際文化交流活動とは    

 新しい時代に対応して国際文化交流活動を推進していくためには、これからの国際社会に日本がいかに関与し、貢献を深めていくかについて基本の思想が必要である。これまで重要とされてきた交流の分野にしても、新しい時代の要請のもとにさらに緊急度を増しているものが多い。だが、それにもまして、新時代を展望しながら効果的な国際文化交流を推進していくには、いくつかの新しい発想での取組みが必要となっている。何よりも、新たな秩序を模索する国際社会にあって、来るべき国際関係をさらに平和で豊かな交流の場としていくために、我が国はその経済力にふさ わしい大きな文化的責任を果たしていかなければならない。その責務の一端としての国際文化交流の推進が、これまで以上に重要になり、日本の存在理由そのものにかかわっている、との基本的認識に立って、具体的な活動を展開しいくべきである。

 

1. アジア・太平洋地域の未来を作り上げる交流

 

 アジア・太平洋地域の多くの諸国のめざましい発展と経済的相互依存関係の深まりとともに、同地域の地域的連帯が深まりつつある。この地域が“外に開かれたコミュニティ”として発展していくことは国際社会全体にとっても大きな意義を持ち、このために日本が果たすべき役割は大きい。政府レベルだけでなく、特に民間や地方の組織を含めた幅広い交流や協力関係を推進することは、このアジア・太平洋地域のコミュニティ作りのための基本的条件と考えられる。また、アジア諸国との関係については、過去の歴史を正しく認識しながら新しい歴史を構築していくことが、日本が責任ある国際国家になるために重要であること、日米関係の将来においても、アジア・太平洋地域での利益の対立を避け、協力関係を増進することが肝要であることなどからも、この地域における交流を将来の重点的な目標とすることが極めて望ましい。

() 来年は第二次大戦終結の50周年に当たることもあり、これを一つの節目として、我が国は域内諸国との間で未来志向的な関係の構築に向け、一層の努力を傾注していく必要がある。 この観点から、異文化理解の促進を含む青少年の交流など、アジア・太平洋地域における各種交流事業を推進していくことが重要であり、そのために必要な措置を講じる。

() 民間や地方の組織が、アジア・太平洋地域との間で交流と協力のネットワークを拡充できるよう、そのための活動を支援する。

() アジア・太平洋地域の文化を我が国に紹介するため、文化交流団体を中心とする国内基盤を整える。

 

2.未来志向の交流の推進

 

 国際文化交流の推進は長期的な視点で推進しなくてはならない。特に新しい時代を作り上げていく青少年の相互理解、異文化理解、対話と交流を推進することに重点を置いていくべきである。 その意味でも、海外からの留学生の受入れ体制の整備を一層急がなければならないし、既に大きな成果をあげているJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)等を通じて、将来を担う海外の青年達との交流を拡充することや、国内の学校や海外の日本人学校への外国人子女の受入れ体制の整備など教育活動を通じた国際理解を一層図ることが望まれる。また、我が国の青少年が留学や日本語教育等各種分野での交流・協力のために海外へ行き、その実状に直接に触れることや、外国の青少年が国内外の教育機関の各種プログラムを通じて来日し、我が国との交流が促進されることの意義は大きい。さらに、これらの交流事業終了後のフォローアップにより、継続的な相互理解の推進を図るべきである。

() より多くの分野での対日理解を促し、将来の日本との交流の発展を期するためにも、母国の大学に在籍したまま一年間日本の大学で勉強する短期留学制度を創設することが望ましい。このことは、先進国との留学生の数の不均衡の解消にもつながると思われる。

()「留学生受入れ10万人計画」の早期実現を目指し、留学生宿舎の整備、奨学金等の充実、身元保証人制度の弾力的運用、留学生センターの整備をはじめとする大学等の受入れ及び教育研究体制の充実を図る。さらに、留学情報の提供、留学生の来日前の準備及び帰国後のアフターケアのための体制を強化して、留学の効果の増進を図る。

() 地域における留学生との交流や青少年交流等の草の根レベルの交流を促進するため、地方や民間の交流団体やボランタリー・グループなどへの支援を充実する。

() JETプログラムの規模、事業内容の拡大やそれに伴う招致対象国の増大を図るとともに、政府、地方公共団体、民間等で行われている各種青少年交流の推進を図る。また、JETプログラムに参加した外国青年や各種青少年交流の参加者のフォローアップ活動を重視し、効果の一層の増進を図る。

() 青少年をはじめとする国民相互間のふれあいと交流の機会を増大させるため、スポーツ交流の増進と基盤の整備を図る。また、1998年に開催される長野オリンピック冬季競技大会等国際競技大会の我が国での開催を支援するとともに、指導者の育成等の体制を整備する。さらに、開発途上国等諸外国へのスポーツ協力を推進する。

 

3. 対外的な文化、学術活動の活発化

 

 国際的な影響力の拡大にもかかわらず、日本が、国際的な文化、学術、知的分野の活動にまだ十分に参加していないことは、これまでもたびたび指摘されてきた。例えば、国際的な課題についての日本の政策的立場や国内の論議を正確に外国に伝えるための研究や著作はいまだに少ない。また、学術研究は、現代世界の様々な課題の解決のための基礎ともなるものであるが、その発展に対する我が国の貢献がなお十分でないとの指摘もある。

 経済大国として国際的地位が向上した我が国に対して、諸外国の関心が近年格段に高まってきているだけに、これに十分にこたえるためにも、日本からの発信能力を大幅に強化する必要がある。このためには、国内の文化、学術等の体制を充実させることによって発信内容を十分に高める努力、発信のための担い手である人材の育成、内外の交流拠 点の整備、研究交流のためのフェローシップの拡充等により、実施体制と基盤の強化を図る必要がある。「顔の見えない日本」から「顔の見える日本」に向けて努力を集中すべきである

 

() 学術交流の推進のため、若手に重点を置いた研究者交流、国際共同研究等の交流・協力プログラムを推進するとともに、拠点となる研究機関の強化をはじめ大学等の研究環境の整備・充実、研究水準の向上を図り、これらを通じて欧米諸国との研究者交流の不均衡を是正する。また、日本学術振興会の海外連絡拠点の整備が望まれる。

() 各国の政、財、官、学、報道機関など幅広い分野の知的指導者との対話や交流の充実を図るとともに、海外における地域研究所の設置、国際交流基金の知的交流のための海外センターの設立等により、知的交流を推進する。

() 学術情報ネットワークの高度化、高速化を図るとともに、諸外国のネットワークとの連携等により、研究情報の発信を強化する。

() 地域研究の推進体制を強化するため、国内における地域研究体制の整備、外国の研究者との研究交流の推進を図るとともに、内外の機関の連携を緊密化する。

() 国際文化交流関係の各種情報の収集及び国内外への提供については、国内において国際文化交流に関する情報のデータベースの整備を図るとともに、関係機関が連携を図りネットワーク化することにより効果的な情報提供を行う。その際、海外から現代日本に関する情報提供の要望が増大していることを踏まえ、伝統文化から現代文化まで幅広い情報の収集、提供に努める。また、日本の地域文化の多様性に関する情報提供を推進するため、姉妹都市交流をはじめ地方公共団体の国際交流活動の活用を図る

() 日本語文献、文学作品等の外国語への翻訳及び海外での出版を一段と推進するための措置を検討する。

 

4. 日本理解の飛躍的増進

 

 国際社会において、経済面での日本の存在が大きなものとなり、海外に住む日本人や旅行する日本人も急激な増加を続けている。それにもかかわらず、諸外国において、日本についての深い理解、あるいは歴史から現代社会にまでわたる日本や日本人についての全体的なバランスのとれた理解は、必ずしも十分に向上しているとは言えない。逆に、対外的な接触面が増えるにつれて、相互理解の不足から生じる摩擦が今まで以上に多くなる可能性すらある。

 幸いに、日本への関心は、日本との関係の深まりとともに劇的に増大している。海外及び国内において日本語を学ぶ外国人の数は 300万人にも達していると見られ、その学習の目的や学習内容も多様になってきている。このような関心に効果的に対応することこそが、諸外国における日本への理解を深め、日本への親近感とつながりを深めることに なる。

 また、世界の多くの人々が海外の情報の大半をテレビを通じて得ているのが現状である以上、衛星を利用した日本からの諸外国向けのテレビ放送の発信、ニュース番組及び日本語教育番組を含む放送番組やその素材の海外提供など、視聴覚メディアを利用した日本からの情報発信を強化することが必要である。さらに、通信技術等の急速な進歩に伴い、マルチメディアをはじめとする新しい情報通信手段を利用した日本語学習の方法・教材の開発、日本文化紹介の方法等を検討していくことも必要である。

 

() 日本からの海外に向けたテレビ放送の発信を可能とするとともに、放送番組やその素材の海外提供を促進するための国内措置の充実、海外に向けたテレビ放送の円滑な実施のための国際的合意の形成などの体制作りを急ぐ。

() 日本の情報を海外で報道することに関しては、報道機関(特にテレビ関係)が利用する国際通信回線の使用料が非常に高額であることなどが、発信を困難にする要因となっているので、この改善のための方策を検討する。

() 日本語学習者の急増と学習目的の多様化に対応するために、国立国語研究所日本語教育センター、国際交流基金日本語国際センター、関西国際センター及び海外日本語センターをはじめとする日本語教育の推進体制を充実する。

  また、海外への専門家・若手日本語教師の派遣、外国人日本語教師の育成、各国の日本語研究者との交流、日本語能力試験実施体制の強化、多様な需要と多様な言語・文化の伝統に合致した日本語教材や辞典、教授方法の開発の強化などにより、国内外の日本語学習を奨励するとともに、日本語教育機関の質的向上を総合的に支援する。

 海外における日本語の普及に当たっては、中・高校生への普及にも重点を置くとともに、日系人を通じた普及や日本人学校の活用等についても配慮する。

() 地域に在住する外国人等への日本語教育を充実するため、日本語教育の機会の提供、日本語教育に携わる者(ボランティアを含む。)への研修、教材の整備などの施策を推進する。

() 大学院レベルの日本語教員養成機関、国立国語研究所日本語教育センター等の充実により、指導的な日本語教師の育成を強化するとともに、日本語教師の資質の向上及び身分の安定化を図る。

() 海外の日本研究機関、学会等に対する支援及び情報提供や、これら日本研究機関・日本研究者との協力を強化する。

() 国際日本文化研究センターをはじめとする国内の日本研究機関のさらなる整備・充実、外国の日本研究者との共同研究及び研究者交流の一層の促進を図る。また、日本研究のための留学生の積極的受入れにも重点を置く。

 

5. 国際文化交流を通じての国際貢献

 

 環境問題等世界が協力して解決に取り組まなければならない課題が増えており、日本が非軍事的な分野での国際的な貢献を大幅に増大させることはますます大きな意義を持つ。

 人類共通の財産である世界の有形・無形の文化遺産の保存・修復と振興のために、我が国が積極的に協力し、「日本は文化を守ることを重視する」という姿勢を世界に示すべきである。また、旧社会主義国等の民主化と市場経済化を進める国に対しては、それが円滑に進められるよう知的支援を推進することが急務である。さらに、環境問題、開発問題、難民問題等の国際的な研究や協力活動を必要とする課題について、日本がこれまで以上に積極的に取り組むことが必要になっている

() 世界の有形・無形の文化遺産の保存・修復・振興に対する政府及び民間の協力活動を組織的に推進する体制を整備するとともに、その基盤となる国内の研究体制及び人材の育成を強化する。また、世界文化財機構等の民間における文化遺産保存協力を支援する。

() 開発途上国の文化を担う人材育成及び開発途上国の文化振興の拠点整備に対する協力を強化する。

() 開発途上国、旧社会主義諸国等への制度改革とそれを担う人材育成のための知的支援を急ぐ。

() 国際的な研究や協力活動を必要とする課題については、学術交流、知的交流、国連大学等の国際的組織との協力等を通じた研究交流や協力を推進するとともに、地方公共団体、NGO等の民間組織、企業、個人レベルにおける国際交流活動の国際協力分野への展開を推進する。

 

6. 世界の豊かな文化の発展に寄与

 

 芸術文化交流は、世界の様々な文化を持つ人々が、互いに理解し合う上で大きな役割を果たしている。今後は、それらの交流に加え、アジア諸国をはじめとする諸外国の芸術家との共同制作などを通じて新しい文化を創造し、世界の文化の発展に積極的に寄与していくことが重要である。

 芸術文化交流を進めるためには、我が国自身の芸術文化活動を振興するとともに、海外の芸術家も含めた文化の創造の場となるような条件を整備し、諸外国との交流を拡充する必要がある。

 また、芸術家の権利を守り、創造活動を支援するため、国際文化交流の場においても著作権思想の普及を図り、著作権の尊重に留意する必要がある。

() 我が国の芸術文化紹介や国際的なフェスティバルへの我が国の芸術家・芸術団体の参加を支援する。また、我が国の芸術家、舞台技術者、アート・マネージメント担当者等の人材育成と芸術家の共同制作を支援する。

() 21世紀を「友好と文化の世紀」と位置づけ、新世紀の開始に当たって世界の芸術の祭典「21世紀国際文化フェスティバル」を開催することについて検討する。

() 映画の海外紹介のため、東京国立近代美術館フィルムセンター、国際交流基金等関係機関の基盤強化を図り、それらの連携を強化する。

() 芸術文化交流の強化のため、文化庁、国際交流基金の予算等の充実に努め、また、交流の基盤となる第二国立劇場(仮称)等の国内の芸術文化関係機関を整備するとともに、公的助成の充実や寄付金等に対する税制上の優遇措置の活用により、民間芸術団体の活動を支援する。

 

おわりに

 

 私達は、世界の平和のもとに、異文化とのさらに多彩な交流によって我が国の文化を一層豊かなものにし、これを次の世代に伝えることを願っている。そのためにも、我が国自身が諸外国にとって魅力ある交流相手となり、魅力ある相互交流の場となることを求めずにはいられない。

 国内外の状況が大きく変化し、国民一人一人が従来の価値観やシステムを見直し、新しい時代に即した各分野の制度の改革を期待している今日こそ、国際文化交流の面でも、そのための国内の体制の整備や交流基盤の強化を思い切って進めなければならない。

 何よりも、この報告書に盛り込まれた提言が、今後着実に実施されることが重要である。このため、現在、内閣に置かれている「国際文化交流推進会議」を活性化し、関係各省庁の連携を強化するとともに、総理大臣出席の下に有識者による会議を随時開催し、実施状況の報告や討議を行い、本報告内容を確実に実施していくことを希望する。

 

●国際文化交流に関する懇談会メンバー

(座長)有馬朗人      理化学研究所理事長

浅 尾 新一郎   国際交流基金理事長

大場智満      国際金融情報センター理事長

岡 野 俊一郎   国際オリンピック委員会委員・日本サッカー協会副会長

加戸守行      日本芸術文化振興会理事長

川口順子      サントリー株式会社常務取締役

如月小春      劇作家・演出家

高島肇久      日本放送協会報道局解説委員長

高野悦子      岩波ホール総支配人

津 田   正   自治体国際化協会理事長

成 田   豊   株式会社電通社長

ブルース・バートン 米・加大学連合日本研究センター所長

芳 賀   徹   国際日本文化研究センター教授

平山郁夫      東京芸術大学長

房野夏明      経済団体連合会専務理事

本間長世      東京女子大学教授

水 谷   修   国立国語研究所長

矢 内   廣   ぴあ株式会社社長

山 本   正   日本国際交流センター理事長        (五十音順)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・