2006年6月23日

第十回国際協力論

NGOと国際協力

川島真 shin@juris.hokudai.ac.jp

 

INGOへの注目

  (1)国際NGOの活動領域の拡大 

⇒ ルワンダ内戦、イラク、アフガニスタン戦争など 

         医療、食糧、産業廃棄物、核廃棄物、人権問題、貧困問題、民主間問題、ジェンダー問題

  (2)拡大の背景

     ▲地球規模の問題が生じたこと。地球環境問題や資源問題など、一国家では対処に限界の生じる問題が増加した。そのため、国際組織、地域の枠組みが重視されるとともに、INGOが重視されることになる。そこにおいては、地球公共財global public goodsが重視される。http://www.undp.org/globalpublicgoods/ NGOもまた、国際公共財を提供する主体となる。

     ▲冷戦の崩壊後における民主主義の拡大、と普遍化。民主主義は、肯定的に捉えられている、また重視されている価値である。多くのNGOが民主主義のミッションとなって、各地で民主主義を“伝道”している面がある。

     ▲グローバル化での国家の役割の変化(国家の役割が縮小したなどと単純に言うことはできない)。個人および民間団体の活動範囲が拡大し、多元化する中で、国家がそうした主体の活動を掌握することが困難になってきているので、国家による公共政策には限界が生じはじめている。そのために、「国と民」の双方による公共性の設定が求められている。あるいは世界の「官と民」が協力したかたちでの公共政策の創出が求められている。そこでINGOの活動が重視されることになる。

     ▲アメリカなどの“パワー”に対して、異なる意見、立場にある主体の重要性。

  (3)課題

     ▲国家など、ほかのアクターとの関係、NGOどうしの関係など。 

 

2.国際協力とNGO

   INGOは新しいものだろうか??

    ▲実は、世界の主要なINGOの期限は第二次大戦以前である。

      たとえば、戦争被害者や子どもたちを救うべく、彼らに生活物資を与えるなどしてきた。

      こうした戦前期以来のINGOには宗教性をともなったものが多かった。だが、こうした組織には資金的な問題が残されている。

    ▲戦後、特に昨今は、政府から大量の援助を得た資金豊富なINGOが出現した。しかし、政府に指示された「非政府組織」というのも根本的に矛盾している面がある。

   ▲NGOと政府の間にある“時差”

      ある問題に対する政府の挙動は極めて遅い(ことが多い)。そうなれば、多元化された社会において多様に発生する問題に柔軟に、迅速に対処することは極めて難しい。ここにNGOが活動する空間ができる。

     ⇒これが国際社会、地球社会ともなれば、国家、国家群の動作はいっそう遅くなる。そこにおいて、活動空間ができることになる。また、冷戦終結後は問題に対処するインセンティブがさがっている。

 

3.INGOの機能

 ▲ INGOは何をするのか。国際社会から見れば国際圧力団体ともなるが、基本的な機能は以下の数点にまとめることができる。 

  ()課題設定(agenda setting)

      一般的には、政府の認知している問題と社会に於ける各種の問題は完全に一致するわけではないので、NGOがその政府と社会の間の間隙にはいり、課題設定をおこなう。

  (2)認識の共同体としての機能(epistemic community)

    NGOは専門家組織としての側面もあり、経験、豊富な実践体験から、その能力を発揮することができる。

  (3)政府への提言機能とロビー活動

    NGOは自らの立場で政府に提言をおこない、政府と国際機関との関係に対しても提言をおこなう。ここでは、NGO間のネットワークが重視される。  

 

4.INGOの課題

  ▲政府とNGOの関係については、さまざまな言い方がある。  

    NGOは「反政府」なのであって、「非政府」なのである。

    NGOはオブザーバーではなくて、パートナーである。

    NGOは大きな力を持つもので、国際社会では原動力としての役割を果たす[1]

 しかし、

  ▲INGOの発展は順調とはいえない面がある。例えば、少なからぬNGOが発展途上国などで形成され、先進国から来たINGOと対立するということもある。すなわち、文化的な差異、目的の相違などから、NGO間の「国際問題」が発生したりするのである。

  以下、簡単にINGOの問題を紹介する。

  (1)資金難

   NGOは慢性的な資金難となっている。特に先進諸国のNGOでは地域社会がすでに推戴しているので、資金が集まりにくい。また、グローバル化以後、企業のNGOへの支援も縮小してきている。

  (2)専門家の雇用と社会との関係

   NGOは次第に専門化してきている。またアカウンタビリティが求められる中で、たとえば会計に関する専門家を雇用するなど、しだいに「手作り感」、「草の根」的なものが失われていく。

  (3)組織の硬直化

   NGOはもともと市民参加型を基本としていたが、次第に大企業同様に組織が専門化し、部門別の縦割り組織が形成され始めてきている。その中で、ボトム・アップからトップ・ダウンになってきている。

  (4)ボランティア性の下降   

  (5)現地社会と現地NGOの乖離、そしてINGOの反抗

    現地に形成されるNGOは専門性、あるいはINGOとの調整などのために必要な英語能力などにより、次第にエリート集団化する傾向にある。そのため、現地の社会からも遊離してしまう。また、近代ナショナリズム的な論理で、INGOと衝突することもある。

  (6)評価方法の問題

    NGOの活動に対するどのようにおこなうのかという問題。可視的な成果を重視するならば、貧困問題などには対処できず、半近代化されたところに重点的に投資することになる。

 

5.日本の対外協力とINGO

  ▲日本のINGOの展開

   日本のINGOの淵源は第二次世界大戦の時期に求められる。医師や医学生を含むキリスト教系の団体が中国大陸で、難民救護などにあたりましたが、戦後はあまり活動が見られず、1960年代前半に活動が再開されました。以後、現在に至るまで40年強の歴史があります[2]

   第一期 萌芽期(1960−70年代前半)   アジア農業支援活動中心

                         (鶴川学院農村伝教神学校の農村指導者養成計画など) 

http://www.ari-edu.org/information/whatisari.html

   第二期 市民ボランティア勃興期(70年代末から80年代末)

                          1979年にインドシナ難民への支援を契機に、市民ボランティア団体がうまれた。JVC、SVA、AARなど。

JVC(日本国際ボランティアセンター)http://www.ngo-jvc.net/ 

SVA(シャンティ国際ボランティア会)http://www.jca.apc.org/sva/ 

AAR(難民と助ける会)http://www.aarjapan.gr.jp/ 

   第三期 INGOの日本進出時代(80−90年代)  日本の豊富な資金をあてにしたINGOの日本進出。Foster Plan、またMSFなど。

日本フォスタープラン協会 http://www.plan-japan.org/home/ 

国境なき医師団日本 http://www.msf.or.jp/ 

 

日本NGOの展開を見れば、1979年のインドシナ難民流出が大きな意義をもっている。80年代になると市民運動的なNGOが増加し、その活動範囲も拡大し、開発、環境、人権などの領域に進出したが、財源および組織上の問題を抱えながら、日本の国際貢献の一部分を担うようになっている。

 ▲日本政府の対外(国際協力)政策決定過程とNGOの関係

     NGOは「反政府」なのであって、「非政府」なのである。

     NGOはオブザーバーではなくて、パートナーである。

     NGOは大きな力を持つもので、国際社会では原動力としての役割を果たす

   ●OECDの下にあるDACによるレポート

Development of Cooperation Reviews; Japan,No34,1999

     ⇒ 日本の外交政策決定過程におけるNGOの影響力が小さいことを指摘、改善要求

     ⇒ しかし、2001年から2002年にかけて発生した、外務省とNGOとの間の争議が、日本のNGOに対する認知のレヴェルを示すことになった。

        ★ジャパン・プラットフォーム http://www.japanplatform.org/top.html 

           政府の意向に必ずしも従うわけではないとジャパン・プラットフォームが表明したために、(ジャパン・プラットフォームにも出資している)外務省がこの組織の会議参加を拒否。大きな問題となった。NGOは「非政府組織」なのであり、外務省側の発想は、国際標準に照らして極めて奇異に映るものであった。

   ●日本政府のNGOとの協力の試み

     ⇒ 1985年ODA予算内部に NGO調査/支援費が計上された。

        1989年 NGO補助金制度、そして草の根無償資金協力制度ができた。

      ★1990年代には国際ボランティア貯金制度ができ、94年には外務省経済協力局に民間援助支援室ができる。

      ★1995年の阪神淡路大震災は日本の“ボランティア元年”と言われる。98年に特定非営利活動促進法が議会を通過し、直ちに施行された。

     ⇒ 2002年 NGO大使という職が外務省に設けられた。

             (このような職は、スウェーデンに次いで世界で二番目に設けられた)

              初代大使は五月女光弘大使。

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/listen/interview/intv_24.html 

 

NGOと日本外交〜民間外交の一翼を担う市民団体〜」
五月女光弘 NGO担当特命全権大使に聞く (収録:平成15年1月29日)

 近年、国際社会に於いてNGOのプレゼンスが高まりを見せている。しかし日本国内に於いてNGOは未だ漠然とした概念に過ぎず、国民全体がNGOの活動に十分な理解を示しているとは言い難い。しかしNGOが主要なアクターとして民間外交の一翼を担うためには、その前提として個々の国民がNGOと深い理解を共有する土壌が不可欠である。こうした問題意識を胸に秘め、初代NGO担当大使に就任された五月女氏に話を伺った。(篠崎)

篠崎:まず、NGOの定義について伺えますか。
五月女:NGOは、非常に幅広い分野の団体を指します。その中には同窓会的なもの、地域の人達のために活動しているもの、途上国で活躍しているものまで色々とありますが、出会った団体によってそのイメージが変わってしまいます。100のNGOがあれば100の違った活動があるわけです。私は、外務省が関係するNGOのタイプは大きく分けて3つあると思っています。1つが途上国で草の根レベルの支援を行っている「開発援助型」NGO。2つめは政府や自治体、国際機関に対してこうすべきだと提言する「提言型」NGO。そして、例えば留学生を支援するなどして親睦を深め、日本について良い印象を抱いて貰うという民間外交官的な役割を推進する「国際交流推進型」NGO。外務省が関わらないものでは、例えば介護のサービスや点字・手話を学んで還元するNGOがあります。厚生労働省といった他省庁が関係している団体ですね。
 日本で継続的にそのような活動を行っている組織の数は、大雑把に見て10万程度でしょう。その中で外務省が関係する団体は、せいぜい3,000から3,500ぐらいです。その中で開発援助型となると300から350。数年前にNPO法という法律が成立しました。これに基づき登録されているNPO法人は8,700ぐらいでしょうか。しかしその中でも税制上の優遇措置を与えられている認定法人は9団体しかありません。
 一方、アメリカにはそうした団体は140万ほどあります。税制上の優遇措置を与えられている団体も87万と、全体の60%を占めます。日本は0.1%です。それだけアメリカは寄付が集まり易く、活動し易い、NGO先進国ということです。日本はまだまだ追い付いていません。
 世界的にもNGO活動の重要性についての認識は高まっています。国民の意識が高まって、政府だけでなく一般の民間の人達もサポートする組織にならないとNGOは育ちません。日本でも、よりNGO活動をし易くする下地を作ることが必要でしょう。NGO活動というのは単独ではとても出来るものではありません。政府の力、地方自治体の力、民間企業の貢献、そしてメディアの人達の支援。この4者が一体となって支援することが必要です。

篠崎:五月女大使は初代NGO担当大使に就任されましたが、同大使の目的は何でしょうか?
五月女:初代NGO大使になる前、私はアフリカのザンビア、マラウィという国の大使だったわけですが、そこで日本のNGOの方々や青年海外協力隊の活躍を拝見しました。実はマラウィはアフリカ大陸で1番の協力隊派遣国、2番目がザンビアなのです。

 

篠崎:マラウィやザンビアに派遣が多いのはどうしてですか?
五月女:まず一つは、政治的に安定していたということでしょう。南部アフリカは紛争で危険な状態にあり、ボランティアの人達が活動しにくい現場でした。しかしザンビアとマラウィは比較的安定しており、日本人の活動を受け入れ易かったのです。気候的にも決して暑いところではなく、また、先駆者がその地で良い仕事をしたためそれに続く人も多くいました。

 


 それで、なぜNGO担当大使になったのかというと、私が東京にいた時、スウェーデンのNGO担当大使が訪れてきたのがきっかけです。北欧諸国は、途上国支援を行う際にNGOと協力することが非常に多く、その中で政府とNGOの架け橋となる人として任命された世界で第1号の大使だと思いますが、その人の話を聞いて、ゆくゆくは日本にもこうした大使が欲しいな、と。
 世界的に、政府がNGOと連携する場面は増えています。日本も、ODA自体は伸び悩んでいますが、NGOと一緒に行う事業の予算は増えています。より良い事業を行うにはNGOと政府の架け橋となって一緒に活動できる場と、それを執行する人間が必要です。しかしながら、これまでの制度は縦割りでした。つまり、外務省の中で、開発援助型NGOとの関係は経済協力局に、提言型NGOとの関係は国際社会協力部の関係部局に、国際交流型NGOとの関係は外務報道官組織の国内広報課にそれぞれ分かれていたわけです。そこで、全体として外務省とNGOとの関わりを見るNGO担当大使が設置されたのです
 私は以前に、経済協力局でNGO関連の仕事をする民間援助支援室の初代室長を務めており、またアフリカ大陸では日本のNGOの活動を見ました。そういう両面を知っているからということで初代大使に選ばれたのではないかと思います。

篠崎:最近、NGOのプレゼンスの増大を実感します。こうした背景と関連して、五月女大使はNGOの存在意義をどのようにお考えですか?
五月女:NGOの活動には政府より優れた部分があります。例えば、決定が迅速な点です。政府の場合は様々な手続きを経るためにどうしても時間がかかってしまう。一方、NGOの場合には資金面の問題があり、なかなか十分な活動が出来ません。政府は資金面では大きな規模を有しています。だから資金面で支援をするわけですね。この2つのプラスの面を合体すれば、オール・ジャパンとして国際社会で顔の見える貢献を更に進められるようになるのではないかと思います

篠崎:アフガニスタン復興支援国際会議のNGOセッションでは、外務省とNGOとの対立が露呈しました。この事件を踏まえ、外務省にとって反省すべき点を挙げるとすると何ですか?
五月女:私も長い間、NGOと信頼関係を持って仕事をしてきましたから、残念なことです。
 やはり相互の理解が足りない部分があったのだと思います。NGOの人達が目指す国際貢献の方策と政府が目指すものとが同じものではなかったのかも知れません。両方とも良かれと思って活動していたのは間違いないのですが、そのやり方についての意思の疎通がうまくいかなかったのでしょう。大枠では一致していたのですが、末端の決定の仕方で誤解が生じてしまった。それがきっかけで相手に対する不信感を抱いたのだとしたら、それは非常に残念です。目標は同じであったわけですから。やはりこういうことは是正し、NGOと外務省の間で更なる緊密な関係を築くべきだと思います。
 そのためには「政府は何をどこまで出来るか」をNGOの方々も理解しなければなりませんね。例えば日本の予算制度は単年度制です。このことを理解しておかないと、例えば3年計画が「なぜ出来ないのか」ということになります。政府側も、NGOの方々がどんな意思をもってどんな分野で活動するかについて理解がなければ、やはり不安なわけです。お互いに理解し合えればスムーズに進みます。残念ながらそこがうまくいっていなかったわけですが、今は是正が進んでいると思います。

篠崎:是正のための具体的な方針は何ですか?
五月女:例えば、NGOの活動を十分に理解するため、外務省の職員をインターンとしてNGOの現場に派遣するプロジェクトが始まり、もう50人近くが参加しました。参加者からは、NGOの重要性について理解したという声が非常に多くあります。また、出向という形で、数ヶ月、或いは1年に渡ってNGOの活動そのものを学んでくることも始まっています。更にNGOの人達が外務省や在外公館の活動を理解するために、専門調査員制度を設け、大使館員として活躍して貰っている例もあります。他にも海外の有力なNGOの本部に日本のNGOの人を派遣して、むこうで研修してもらう、一種の留学制度も始まっています。
 ここ1、2年でこうした改革は相当進みました。構想自体は5、6年前からのものです。それが去年あたりから加速度的に実ってきたわけです。

篠崎:逆に、既存のNGOに対して改善を促したい点は存在しますか?
五月女:日本の場合、NGOそのものの問題ではないですが、基本的に規模が小さいということがあります。それから資金力が小さい。そのため専門性を持った人間がなかなか集まりにくい。これは団体の責任ではなく社会的な問題ですが、他の欧米諸国ではNGOの人達が安心して働ける環境が作られています。例えば有給スタッフです。安心して活動し、かつ生活できる手当があるため、修士・博士号を取った人達がそこで専門的な活動を行い、NGOが育っていくわけです。しかし日本の場合、有給スタッフが本当に少なく、金額も少ないため、安心して活動に打ち込める状況にありません。
 継続は力なりといって、継続すれば経験と技術も身に付くわけですが、財政的な基盤が弱いとなかなか十分な活動が出来ません。民間からのサポート、個人からの寄付と企業からの寄付が十分に行われないとNGO自体が育ちません。政府としてはNGOを育てる手は打っていますが、やはり日本人のNGO活動に対する理解がまだまだ浸透していないと思います。欧米並みに、NGOという活動が社会から認知された「職場」にならないとダメだと思います。ボランティアで入ったとしても、そこで継続的に活動する人に対しては、社会がそれに報いてあげる必要があると思います。情熱だけでは絶対に出来ません。国民の意識をもっと高めるということと、人材を育成して専門性を高める必要があるでしょう。

篠崎:日本のNGOを特徴付けると、どういう点になりますか?
五月女:難しい問題ですが、規模が小さいため、「小回りが利く」ということはあります。また、「日本ならではの」というのがありますね。日本人のノウハウを活かしたもの。例えば感染症を防ぐための技術や井戸を掘る技術です。要するに日本の伝統的な技術を活かした支援、医療技術を活かしたもの、それから通信技術等が挙げられます。海外のNGOには地雷の除去や内戦の終結など、かなり国際的かつ大掛かりな活動に参加しているNGOがあるわけですが、日本の場合はどちらかというと草の根レベルですね。生活に密着した分野に日本は強いわけです。
 NGOには「結果重視型」NGOと「理念型」NGOがあります。日本のNGOは、政府の支援を受けないことを重視する理念型NGOから始まりましたが、欧米のNGOは違います。どんな形であれ結果を残すことに意味があると彼らは考える。理念型だとどうしても活動が小さくなってしまう。欧米の発想からすると、やはり結果を出してこそのNGO活動だ、と
 無論、提言型NGOは理念重視型ですよね。それはそれで成り立つわけです。こういうのは政府との繋がりが薄い方が良いわけです。でもフィールドを持って活躍するNGOは政府の資金も活用しなくてはなりません。理念型から始まっても、やがて結果重視型になります。アメリカのNGOは結果重視型ですが、日本のNGOは理念重視型から始まってきて、徐々に結果重視型に近付いてきている。どちらが良いというものではなく、何を目的とするかだと思います。

篠崎:日本のNGOは実力に乏しく、そのため日本のNGO活動は「顔が見えない」としばしば指摘されます。NGOの「実力育成」という観点から、外務省が果たすべき役割は何でしょうか?
五月女:たくさんありますね。そもそも日本は寄付が一般化している社会ではありません。でも欧米諸国は寄付をすることが当たり前になっています。欧米には国家よりも先にコミュニティがありました。彼らは相互扶助を目的に、キリスト教会を中心としたコミュニティを形成し、お互いに助け合う土壌を作ったわけです。それが後に州になって、国になった。だから国を頼るという発想がそもそもなかったわけです。でも日本という国は、中央集権的な国家というのがしっかりとあって、税金というものを取られます。また、アメリカには寄付に際して税金の優遇措置があるわけです。日本の場合と根本的に違うのはそこですね。日本の場合、まずは国民全体から税金という形で吸い上げて、それを政府が分配します。国民は税金として取られるために文句を言えません。でもアメリカの場合、寄付をする際は自分の意志が入ります。自分のお金が直接そこに行くわけです。
 良い成果を挙げられるNGOになるためには、国の支援額を増やす他に、民間からの寄付が集まりやすい制度にしなくてはなりません。そのためには色々な改革が必要です。アメリカの場合、自分の収入の約1.5%程度を寄付することが一般的です。またODAの30%近くはNGOを通して行われています。ところが日本の場合、1%に満たないのです
 このように、アメリカと日本では、社会的なシステム、歴史的背景、全て違うわけです。色々な国の例を参考にして、どうしたら良い結果を残せるかを考えなくてはなりません。外務省の支援も改善されてきました。例えばNGOの海外留学制度です。他にも、特定のプロジェクトについては必要な人件費を支出する制度、緊急事態に関係する事業については事前にお金を支出しておいてすぐに活動して貰う制度などがあります。
 お金の流れがある場合、必ず「透明性」が必要です。それを執行し得る能力が必要です。そうなると会計のテクニックが必要になりますね。他にも、例えば入国管理の知識、輸出入の関税の知識、気象学についての専門性、テントを張ったり炊き出しを行う技術、それから通信技術も必要ですね。一つのNGO活動には色々な人材が必要で、そのためには研修が必要です。それを政府は応援しましょう、ということです。

篠崎:最後に、既にNGOで活動を行っている人達、或いは潜在的にNGOに携わりたい人達に対して、五月女大使のメッセージをお願いします。
五月女:「気楽にやろう」という意識で上手くいくとは思えません。NGO活動は片手間でやるものではありません。NGOには、コアの専門性を有した人達と、その周辺でサポートする純粋にボランティア的な人達がいます。ところが、NGO活動はこの後者だけだと考える人達が多くいます。実際には、専従で活動する人、自分の使える時間を提供する人、そして資金的に支える人と、色々な分野があります。専従で活動するなら相当な専門性と強い意志がないと出来ません。
 私が言いたいのは、「NGOに参加したい人達だけではNGOは成り立たない」ということです。それをサポートする国民の意識が高まらないと、なかなか専従の活動が出来ません。NGO活動をするということはそう簡単にはいかないし、相当な意欲と専門性、そして各界からのサポートが必要なのです。 

 

▲外務省とNGOの協力体制の問題

   1999年に政府は「NGO活動環境整備支援事業」を採用。

   このほかにも、NGO研究会、NGO専門調査員制度などを設けたが、まだまだ制度、政策決定への関与、評価方法などについて問題が尽きない。

 

本来、ジャパンプラットフォームは、外務省、経団連などの支援の下に、政府とNGOの連絡を模索するための「国際緊急人道援助」のための組織として形成された面がある。その最高意思は「評議会」において決定され、そこにはNGO二名、外務省、経団連、民間財団、学者が一名ずつはいった。そして、公開性を維持するために個人および団体のオブザーバー参加への路を開くなどして、現在は17のNGOが正式参加している。

   ▲ジャパンプラットフォーム、ウェブサイトより

現在、50カ国以上で地域紛争が多発しており、世界人口の115人にひとりが難民国内避難民 として国際的な支援を必要としているといわれています。また、世界各地で続発する自然災害によっても多くの人が犠牲となっています。各国政府、国際機関、国際NGOにとって、これら被災者に対する国際緊急援助の強化と質の向上が最優先事項となっています。

このような世界情勢に応え、NGO、経済界、政府が対等なパートナーシップの下、三者一体となり、それぞれの特性・資源を生かし協力・連携して、難民発生時・自然災害時の緊急援助をより効率的かつ迅速におこなうためのシステムが、国際人道支援機関「ジャパン・プラットフォーム」です。

 この「プラットフォーム(土台)」には、政府の資金拠出による基金及び企業・市民からの寄付を募ることによって、緊急援助実施時、初動活動資金がNGOに直接かつ迅速に提供されるため、NGOは直ちに現地に出動、援助活動を開始できるようになります。

 経済界も日本経団連1%クラブが中心となり、「ジャパン・プラットフォーム」を支援することを表明。これにより企業が有する技術、機材、人材、情報等の提供を受ける、いわば企業による参加型貢献が期待されます。

 また、プラットフォームの公共性、アカウンタビリティーを高めるため、メディア、民間財団、学識経験者らの参加・協力も呼びかけ、関係アクターが一体となり国際緊急援助に取り組むシステムの構築を目指します。21世紀にむけて日本の「シビル・ソサエティ(市民社会)」の発展を促進する具体的な試みです。

 

 



[1] “FP Interview, ” Foreign Policy, July-August, 2001.

[2] 日本の国際協力NGOは、約400団体とされています(2002年で391団体)。『国際協力NGO Directory2002:国際協力わる日本市民組織要覧』(JANIC,、国際協力NGOセンター2002http://www.janic.org/