JICA札幌 2006年2月6日
地方自治体職員等国際協力実務者研修
「日本の国際協力とJICAについて」
1.世界の国際協力の情勢と日本
(1)グローバル下での新たな問題群の出現
地球的規模の問題群(貧困、ジェンダー、環境…)、人道支援、平和構築、人間の安全保障、サステイナビリティ(持続的発展)
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人間の安全保障は、一人一人の人間を中心に据えて、脅威にさらされ得る、あるいは現に脅威の下にある個人及び地域社会の保護と能力強化を通じ、各人が尊厳ある生命を全うできるような社会づくり目指す考え方である。具体的には、紛争、テロ、犯罪、人権侵害、難民の発生、感染症の蔓延、環境破壊、経済危機、災害といった「恐怖」や、貧困、飢餓、教育・保育医療サービスの欠如などの「欠乏」といった脅威から個人を保護し、また、脅威に対処するために人々が自らのために選択・行動する能力を強化することである。 |
(2)アクターの多様化
国際機関、国家、NPO/NGO、地方自治体、企業、団体、個人など
(3)方法論の変容
総合性(地域全体への配慮、cf.コミュニティ開発支援)、現地重視、安全の確保、南南協力
一貫性の重視
一人あたりGDPという指標への疑問
多様なアクターとの連携
オーナーシップ(開発途上国の自助努力)
効率性、効果などの評価点検、情報公開・透明性
(4)日本の位置
・こうした潮流に対応、しかし予算減、厳しい世論、情報公開圧力
・2000年国際連合ミレニアム首脳会議におけるODA増額の決定
⇒ 先進国は軒並み増額、日本は1989年にODA供与国世界一になったが、ODA予算が1997年以来減少、2001年には第二位。現在では米国が一位。日本はイギリス、フランス、ドイツ並みとなる。
⇒ 2005年4月 アジア・アフリカ首脳会議
GNI比で0.7%を実現する方向で努力すると総理発言。「我国にふさわしい十分なODA水準確保」。
・日本は、アジア最初の先進国として、また戦後補償とリンクさせながら、そして先進国標準をふまえたODAをおこなってきたが、新たな状況の中でその変化が求められている。だが、OECDの下にあるDAC(アジアの中で日本が唯一参加、韓国はオブザーバー)からの厳しい勧告が続く。たとえばODAにおけるNPOの関与が小さい(⇒ジャパン・プラットフォーム、NGO大使の設置など)、有償比率が高いなど。
・JICAの位置
技術協力、無償資金協力(外務省主管)、有償資金協力(JBIC⇒統合へ)
あくまでも「発展途上国」との関係
新たな方法論、問題提起(現地重視の方向性など)、緒方総裁以後いっそう活発に。
透明性の高いODA実施、国内事務所展開、国内への足がかり
2.日本の国際協力をめぐる情勢
(1)政治開発援助大綱(ODA大綱) (平成15年8月29日、閣議決定)
◆従来のODA
「アジアにおいて最初の先進国となった経験をいかし、ODAにより経済社会基盤整備や人材育成、制度構築への支援を積極的におこなってきた」。また、戦後補償との関連性、アジア重視という性格。
◆新しいODA
グローバル化にともない、複雑に絡み合う、地球的規模での問題が出現、それへの対応が求められる。「特に、極度の貧困、飢餓、難民、災害などの人道的問題、環境や水などの地球規模の問題は、国際社会全体の持続可能な開発を実現する上で重要な課題である。これらの問題は、国境を超えて個々の人間にとっても大きな脅威となっている。また、最近、多発する紛争やテロは深刻の度を高めており、これらを予防し、平和を構築するとともに、民主化や人権の保障を促進し、個々の人間の尊厳を守ることは、国際社会の安定と発展にとっても益々重要な課題となっている」
また、「一貫性」、「省庁間の連携」、「現地機能強化」などが提唱され、さらに「内外の援助関係者との連携」として、「国内のNGO、大学、地方公共団体、経済団体、労働団体などの関係者がODAに参加し、その技術や知見をいかすことができるよう連携を強化する」と、自治体や大学との連携が盛り込まれる。
そして「国民参加の拡大」が新たな重要項目となり、あわせて情報公開、広報などが重視される。このほか、「効果的実施」のために、評価、手続き、不正・腐敗防止、ODA関与者の安全確保があわせて提唱された。
(2)「政府開発援助に関する中期計画」(2005年2月4日)
特に計画性、目標設定などが重視される
人間の安全保障、持続的成長、地球的規模の問題、平和構築への注目
効率性、効果性重視
(3)「経済財政運営と構造改革に関する基本方針について2005」(2005年6月21日)
「ODAの点検と改善−より質の高いODAを目指して」(2005年12月、外務省)
10の改善点 ⇒ 戦略性強化5点、効率性向上3点、チェック機能の強化2点
PDCAサイクルの確立(PLAN,
DO, CHECK, ACT)
国別アプローチの強化
(4)そのほか
・VISIT
JAPAN CAMPAIGN
国土交通省、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)に基づき、「世界に開かれた観光大国」を目指す!〜グローバル観光戦略の構築について〜」を策定(平成14年12月24日)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/01/011224_3_.html
・内閣府:文化外交の推進に関する懇談会
報告書「『文化交流の平和国家』日本の創造を」(平成17年7月11日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bunka/
◆現在の問題点
(1)サステイナビリティ、人間の安全保障、いずれにしても事例不足
(2)国際標準への対応で精一杯で、日本的特色あるODAとは何か発信不足
(3)国益とは何か。予算に対する対日本国民アカウンタビリティだけでいいのか?
(対相手国、対相手機関、地域などへの説明責任は?日本企業、製品重視?)
(4)多元的にアクターが関与するのはいいが、目標・目的も多様。成功像も多様。
評価基準をどうするのか。
(5)人づくり、あるいは平和構築など、目標・評価設定がそもそも困難なものも。
(6)撤退のしかた、終了のさせ方の難しさ。 対イラクの支援。
(7)外交のツールとしてのODA。外交政策といかにリンクしているのか?
(8)ODAの実施体制の問題、各省庁に分散した体制をどうするのか。
(9)NPOとの連携、またACT部分を具体的にいかにおこなうのか。
(10)予算削減の中で国際標準への対応は可能か。
(11)アジア中心ODAの可能性とある種の限界 → 3000ドルラインの意味
(中国も昨今発表された統計で1700ドルに)
(12)求められるものの「ハイテク」化、多様化。ローテクでは無理。ハイテクは支援不能。
(13)特に文化交流の面、日本から何を発信するのか。双方向性をいかに維持するのか。
(14)そのほか
3.大学や自治体が学ぶことができる点
(1)全体として大学や自治体がいかに位置づけられているかということは、一応理解できる。
(2)またその内容、手法からも学ぶことが多い
目標設定、徹底した監査、PDCAサイクル、情報公開…
(3)JICAなどとの連携の可能性
4.北海道大学の事例
よりプリミティブなレベル
(1)確かに、グローバル下の地球規模の諸問題などに対応した部分ある
感染症、あるいはザンビアなどでの大学獣医学部設置支援
(2)しかし、大学としては、そうした事業を位置づけられていない。
・そもそも道具がない(外国語パンフレット、外国語のウェブサイト、宣伝広報・・・)
・人材は?(3年前後で異動する職員、外国語能力、・・・)
・学内のポテンシャルをいかしていない(派遣と受入がリンクしない・・・、個人プレー)
・まったく蓄積されていない。単発的。
(3)法人化と問題点、そしておこなわれたこと
・中期目標の設定、国際交流の本部集中、トップの決断、予算措置
・人材確保(人事面の固定化)、副学長の下のタスク・フォースとの連携
・決定過程の簡素化、予算措置
・外部点検、レビュー(中期目標との対応)、競争原理、他大学との比較
・派遣、受入、イヴェントという予算構成、また単年度予算で何ができるのか
⇒継続性、リンケージ、・・・
・協定校の再点検、無理な交流をしていないか、化石化した協定校はないか。
(協定校の見直し、拡大) 求められているものと、求めているものは一致しているか?
・道具立て、ホームページ、宣伝ツールの拡充
・事務官の海外研修、外国語能力強化、北京事務所設置
・学生に対するTOEFL..ITPの義務化
(4)ある程度の成果
・JICA、あるいは企業などとの積極的な、包括的連携
・北京事務所など開設、留学生増加、派遣学生も増加、一定程度活発化・多様化
・「戦略的」交流、獣医学部とザンビア、感染症をめぐる東アジア規模でのネット形成など
(5)山積する課題
・そもそも何のためにしているのか、課題、目標、成功像は?モチベーションの維持
・諸制度の問題(予算使用方法)
・留学生10万人計画の終了(量より質??)、留学生支援経費の枯渇
・個人プレー ⇒ 制度化 ⇒ ルーティーン化 ⇒ しかし日常的なつきあいの重要性
(人的付き合いと制度の間のバランス)
・学内ポテンシャルをいかしているのか。留学生、外国人教員。
(派遣と受入は依然として分離)
・そもそも北海道大学の魅力はなにであったか。
・地域社会、あるいはそのほかの機関などと有機的に連関しているか
・点検と確認を随時おこなっているか。
・成果や人材が蓄積されているのか。ネットワーキングできているか?
(先進事例としての早稲田大学)
・e-governanceは可能か。学生への広報など。
・危機管理をどうするのか。SARS、フーリガン???
5.北京日本学研究センターの事例(国際交流基金、JICA=無償資金協力で新施設拡充)
(1)1986年、あるいは1979年の日本語教師研修以来の継続性
(2)蓄積された人的ネットワーク。彼らの同窓会が機能。名簿の作成、研究大会など。
(3)しかし、日本側としては「終わらせ方」が問題に。「現地化」、援助なのか協力か。
6.自治体の国際交流の事例
自治体にも国家、あるいは大学などと共通の課題があるのでは??
以下、報告者が出会った幾つかの事例を紹介。
姉妹都市との間の派遣、受入、小イヴェントという枠を超えたところで何ができるのか?
[事例1:戦略性] 政府の特区制度を利用
与那国島 国境交流特区構想 http://www.town.yonaguni.okinawa.jp/
→ 災害対応型の特区申請へ
[事例2:自治体の基礎政策と連関させる事例] e-government化と韓国の先進自治体との交流
「
[事例3: NPOと協力] 北海道のNPO支援制度を利用、観光ポテンシャルを高める事例
(北海道経済部新産業振興室コミュニティビジネスモデル創出業務)
新しい外国人の個人旅行者の受入の基盤整備
[事例4:地域の外国人住民からの発信] 地域住民発の国際交流を基盤にし行政が側面支援
ニセコ町とオーストラリア、ニュージーランド
自然観光資源(たとえばラフティングなど)を外国人が「発見」、観光産業へ。また、オーストラリアなどへ情報発信。いまやニセコのスキー場はオーストラリア人が多い。最近は、富良野にも。自治体はその流れをサポート。オーストラリア、キャサリン市からの交流職員受入。
[事例5: 地域産業を生かす] 地域産業を海外へ移出、逆に輸出市場を開拓
りんご栽培、栽培技術交流 →JICAとうほくのウェブサイト
http://www.jica.go.jp/branch/tohoku/magazine/10/07.html
→ 最近は、昌平県から「まこも」栽培技術者が。
[事例6: 地域産業のノウハウの輸出] 地域の先端的部分を全面的に生かす
アメリカ合衆国ハワイ州の取り組み
http://the.honoluluadvertiser.com/article/2004/Aug/06/bz/bz04a.html
観光客誘致とともにノウハウの輸出。観光事務所の海外開設。
[事例7: イヴェント利用型] イヴェント時のボランティア活動の定着事例、ただし…
長野冬季五輪と国際交流事業:「一校一国運動」と「ボランティア」の事例から
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jspe3/genri/docs/nagano/kasahara.doc
各学校が残ったというよりも、イヴェントに対応できる外国語、国際交流(アテンド)可能な集団の形成、以後、随時「動員」可能に。
[事例8: 市民参加型文化交流] 文化交流の「成功」例
[事例9: 政治化して硬直する事例] 対中韓領土問題など
東京都(石原知事になって、少したってから)北京市との交流困難に
東京都、アジア大都市ネットワーク構想、北京がサインせず(台北が原因)
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2005/050902.htm
島根県議会「竹島の日を定める条例」制定後、韓国諸自治体との交流困難に
http://www5.pref.shimane.jp/Contents/7D51FA113B2/jyourei.pdf
7.JICAに期待すること
自治体、大学、NPO、企業、団体、個人それぞれに何ができ、いかに連携できるのか。
コーディネーター、ネットワーキング主体、そしてきっかけを与えることが期待されるJICA。)