サントリー文化財団報告会

19th/JAN/04

 

植民地近代化(Colonial Modernity)を考える

−日台若手研究者による共同研究−

 

研究代表者(報告者) 川島 真

(北大院法学研究科 shin@juris.hokudai.ac.jp

 

 

●本研究の内容と背景

本研究は、「植民地近代」という問題を日本国内の研究者だけでなく、台湾の若手研究者とともに議論し、論点整理をおこない、その成果を公表して学界や社会に問題提起をおこなうとともに、この研究で築かれたネットワークを今後も継続させていこうとするものである。メンバーには、駒込武、何義麟、陳培豊など、日本と台湾を代表する若手歴史研究者が加わっているが、このグループは日台青年交流者会議という東京大学と台湾大学のゼミ交流の場から巣立ってきた集団でもあり、信頼関係についても既に基盤を有している。

 

●本研究の目標

この計画は2003年から既に開始されているが、第一年目は「植民地近代」というテーマについて参加メンバーそれぞれが個別テーマを深めるとともに、論点の整理をおこない、それを『アジア遊学』(48号)における<特集>として公刊した。二年目の本年は、(1)論点を深める(Colonial Modernityという議論の枠それじたいに問いを発するとともに、事例研究、台湾における特別状況などについて議論を深める)、(2)朝鮮近代史研究などとの比較研究をおこなう、(3)成果について既に昨年度日本で公刊したので、台湾での公刊を目指す、といった目標を設定している。

 

●本研究の活動概要

具体的な活動内容は、駒込武、何義麟、陳培豊、川島真などの数名が頻繁に連絡をとり、年に二度(夏・春)顔をあわせて日台双方における進捗状況について確認しつつ、個別研究を深め、他方で0312月に昨年度同様に東アジア近代史青年研究者交流会議[1]とのジョイントというかたちで「植民地近代」について議論し、問題提起をおこなった。これらの研究成果は、04年中に台湾で公刊予定である[2]

 

     シンポジウムでの議論(20031226日―28日、於台湾大学総合図書館)

 本プロジェクトとしては、松本武祝(東京大学)、並木真人(フェリス女子大学)という朝鮮近代史の中心的メンバーを招聘、また駒込、川島、陳、何らが植民地近代に関して総合的に議論するというかたちをとった。具体的には、松本武祝「朝鮮における『植民地近代』に関する論点の整理と再構成」という報告、それに対する駒込武、張隆志(中央研究院台湾史研究所)のコメントがひとつのハイライトであったが、ここでの議論で際立っていたのは、「植民地近代」と「植民地における近代」という問題であった。理念としての近代の一つの形態として観念された植民地近代と、植民地において近代がどのようにしてあるかという二つの、重なりながらも同一ではないテーマについての議論がなされ、台湾史にいかに適用できるのか、台湾史ではどのように受け止められるかという議論があった。このほか、「植民地近代」に対置されるはずの「植民地伝統」という研究枠組みがありえるかどうかということ、また「脱植民地化」ということがあった。

このほか、会議では議論されなかったが、本プロジェクト参加メンバーである李承機は「植民地メディアと言語」、北村嘉恵が「原住民の近代」、岡本真希子が「植民地支配下台湾の政治近代化」、三澤真美恵が「植民地期台湾映画史」、許佩賢が「植民地台湾近代学校史」などを研究している。彼らの成果は、駒込、川島、陳、何の論考ともども台湾における公刊物に採録される[3]

 

●今後の課題

043月に駒込と川島が訪台して台湾側メンバーと今後の課題、出版計画について相談し、それぞれが個別的に研究を進めることとした。このほか朝鮮史との本格的な学術交流の可能性、沖縄史や北海道史との議論の可能性などについても模索していく予定である。



[1]1997年に東京大学大学院総合文化研究科の若林正丈ゼミと台湾大学歴史系の呉密察ゼミの間のゼミ交流の場として組織され、その後、ゼミ生以外にも次第に参加者を広げていき、日台間の若手研究者の交流の場となっていった日台青年研究者交流会議を前身とし、2001年から韓国史研究や中国史研究との比較、交流を意識するかたちで、東アジア近代史青年研究者交流会議(第一回会議、2002830日、於駒場留学生会館にて開催)として再編された。この会議は年に一回会合を開いており、参加者は50名前後である。 

[2] 出版形態については未定であるが、この点についても本プロジェクトは、シンポジウムをジョイント開催していることもあるので、東アジア近代史青年研究者交流会議との調整をはかる。出版経費は台湾の曹永和基金会から補助されることいなっている(内定)。

[3] 『アジア遊学』では、研究代表者である川島は編輯サイドに立ち、個別論文は公刊していないが、台湾で公刊される中国語版では「植民地近代と外交」といったテーマで寄稿する予定である。