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科学研究費・萌芽研究「国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服―」平成17年度報告書

本研究は、国際連盟における日中関係について研究し、そこから従来の日中関係史研究には見られなかった側面を浮かび上がらせるとともに、直接的な二国間関係に基づくものではない、国際機関を通じての東アジアにおける秩序形成のあり方を追求しようとするものである。今年度は、第一に国際連盟の全身とも言えるハーグ平和会議における日中関係について検討をくわえた。その成果は、下記に記した「歴史物語の中の近代中国論-日本はなぜ中国の主要敵か-」として公刊した。第二回ハーグ平和会議では、既に国際司法裁判所の判事の数をめぐって日中の間で相克があり、日本が中国を三等国として位置づけようとする局面があった。第二に、国際連盟のリットン調査団をめぐる日中間の調整について、特にその「近代」をめぐる解釈の相違や、相互認識の問題について検討を加え、「“歴史的”に見る日中歴史問題」 などとして公刊した。リットン調査団の報告書は、まさに両国の近代を総括しようとするものでもあった。第三に、日本外務省記録などを通じて、衛生や文教など、国際連盟の対中協力をめぐる日本側の見方などについて初歩的な調査をおこなった。今年度は、国際連盟における日中関係の背景ともなるハーグ平和会議、またリットン調査団の報告書それじたいを読み解くという所期の目標を達成したが、多くの課題も残されている。次年度は、国際連盟の議事録などから、日中間の応酬を総合的に把握し、リスト化するような試みをしたい。国際連盟における日中関係の論点一覧とでも言うべきものを作成して、その後に事例研究を進めていきたい。

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