第三回北大亜洲研究会(近現代中国研究懇話会との共催)

  • 2004年09月01日

通訳:川島 真
日程:2004年9月1日(水)
時間:16:00-18:50 場所:北大法学部三階高等研会議室

題名:Social Science Theories and the Study of Political History of the 20th Century China: Some critical reflections
発表者:張 瑞徳氏(前中央研究院近代史研究所副所長)

参加記

 近年の中国近現代史研究の批判的検討として、まず始めに、国民政府の性質の研究について、いわゆるdevelopmental State modelがあげられた。これは主にカービー学派と呼ばれる人々を中心とするものであるが、その主要な特徴として(1)technocracy中心、(2)49年前後の連続性を重視、という2点があげられるとした。このカービー学派に対して発表者は、第一に国家の定義が問題になるとし、国家内部に政府・党・軍が存在し、誰が主要な政策決定者かという問題に関して従来の研究には問題があるとした。第二にテクノクラシーの起源に関して、49年前後の連続性だけではなく、清末からの連続性も考慮する必要があることが指摘された。第三に制度だけではなく人の動きも見る必要があるが、人が全てを決定していたのではなく、制度も重視されていたことが述べられた。
 次に、いわゆるtotalitarian modelについて、改革開放後、急速に様々な悪習が復活した点からみても、必ずしも全てを強力に統治できていなかったのではないかということが述べられた。むしろ民間からのresponseを受け取って政策を決定していた面があったのであり、必ずしも完全な一党独裁ではないのではないかという点が指摘された。また一方で、Subaltern studiesなどの影響を受けて、権力に対する日常・非日常の抵抗の様相の研究が進展していることが示された。
また、近代中国のナショナリズムの研究について、依然として不十分な点があり、例えば、外国人に反対すること=近代ナショナリズムではなく、四川の農民には抗日戦争中も全く国家意識が存在していなかったことなどが示された。さらに、ナショナリズムの形成と関わるいわゆるmemory mechanismの問題についても、国旗・祝日・教科書・メディアなどに関して、その政策決定過程、それを受け取る側(民衆)の選択可能性等の問題、そして編集・出版・オピニオンリーダーの役割などその両者の中間の過程についても、さらに研究を進展させる必要性があることが指摘された。またこれと関連して歴史研究者の役割を再考する必要についても示唆がなされた。
 続いて質疑応答が行なわれ、まず社会科学全体の問題として、日本と比較して台湾がより現実社会との関わりが強いのは何故かという疑問が出され、これは中台関係の影響や特に政治と歴史学の関係が密接であったことなどの台湾特有の事情によるが、前述した歴史研究者の役割や、国家と専門知識との関係を考えた場合、やはり問題もあるとした。また歴史的なmemory形成の問題について、それを受け止める側の史料をどう探すかという問題に対して、様々な民意調査や、雑誌や新聞の投稿欄、個人の日記、宗教関係の史料などが参考になるとした。次にテクノクラシーの形成時期についての質問に対しては、1905年の科挙廃止以前に人事制度の変更が行なわれたものであるとして、清末時期の重要性が強調された。また近年のグローバリゼーションと歴史研究との関係について、例えば20世紀前半における華僑圏でのタイガーバームの流行など、東アジア内部での一体化の問題についても考察する必要性があることが指摘された。
 本報告は内容が非常に多岐にわたり、参考とするところが多く、大変有意義な研究会であった。なお、本報告は中国語で行なわれ、川島先生が通訳を担当された。

(記:北大法学研究科博士課程 柳亮輔)

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