国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服―(科研費・萌芽)

  • 2007年04月03日

 平成17年度から19年度・学術振興会科学研究費・萌芽研究「国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服―」が採用となりました。(合計 3400千円)
 既に平成16年度から19年度の予定で採用されている基盤B「中国外交研究の再構築-外交史と現代外交研究間の断絶の克服と長期的視野の獲得-」(合計 9200千円)と連関させながら運営し、将来の大型科研申請に結び付けていきたいと思います。

■研究代表者 川島真
 研究分担者 なし

■研究目的・意義など
①研究目的
 国際連盟と中国外交、日中関係について、それを「リットン調査団と日本の脱退」という言説の根源である事象から解き放つため、敢えて档案・文書史料に立ち返り、基礎的なデータを整理する。そして、近代の日中関係を多角的に再構築し、国際組織も含めたグローバルガバナンスを歴史的観点から現在、将来に向けて構想する、より大型の研究プロジェクトに(他科研とも連合させ)繋げていきたい(詳細②)。具体的には、中国と連盟の関係、またそこでの日中関係を解明する基礎作業として、(1)国際連盟での中国の代表人事、経費負担、委員会参加、具体的な投票行動、活動状況についてデータベース化する。連盟での日中関係については、(2-1)連盟創設期から日本が委員会レヴェルからも脱退する1938年に至る、各種委員会での議論、公共事業(衛生、アヘン、交通建設等)における中日のやりとり、応酬について年表化する。また、(2-2)特にリットン調査団について取り上げ、中国側の意図、政策、議論の経緯を中国側の档案で詳細に明らかにする。
②特色・独創的な点、予想される成果と意義 
 「リットン調査団と日本の連盟脱退」という事象が日中両国と連盟の関係を象徴してしまっている。だが、1.国際連盟で日中両国がアジアの国として共同戦線を張ることもあった。2.他方、1930年代、「中国は国際連盟の寵児」、「連盟は中国の保母」と言われ、連盟と中国の緊密な関係があった。3.当時、国際連盟は国際公共政策を展開し、中国こそがその主たる対象であった。こうした背景の下にリットン調査書がある。また中国自身がこのような連盟との緊密な関係を模索、構築した面が強い。4.リットン報告書自身においても、従来は満洲事変の結果報告という位置づけであったが、実際は19世紀半ば以来の日中関係史の総括としての意味合いが強い。こうした従来の研究において看過されてきた側面を紡ぎ、新たな視点を歴史的にも、現在、将来にも提示すべく、中国外交档案、連盟文書に基づき連盟と中国外交、日中関係を基礎的に整理し、リットン調査団については事例研究的に解明する。

■着想に至った経緯・研究の背景 
 拙著『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会、2004年)において、中華民国は自らの国際的地位の向上を目指して国際連盟外交を展開したことを検討、また2003年12月の学術創成シンポジウム「いま国連の役割を考える」(於 北海道大学)にて張力らとパネルを組み、`Continuity and Discontinuity: from the League to the UN: the East Asian Context’という報告で、戦後に至る中国外交における国際連盟、国際連合の位置、そこにおける日本の位置(時に敵対、時に連合)を議論した。その後、「戦前期日中教科書問題研究プロジェクト」(日中歴史センター、代表:並木頼寿)に加わり、戦前期に国際連盟で議論された日中教科書問題について学び、それが盛り込まれたリットン報告書について詳細に検討する機会を得た。この経緯の中で、国史ア連盟と中国外交、日中関係が従来の当該分野の先行研究の殻を破るだけの内容に満ちているだけでなく、国際組織と中国外交、日本外交、日中関係という、新しい研究領域を切り開く可能性、そしてそこには現代的に重要な点に示唆的な内容を数多く含まれていることを強く意識した。そこで、この研究を既存の科研の枠の中でおこなうのはなく、海外の主力研究者の力も借りて、新たな萌芽研究として立ち上げていくことを想定するようになった。

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