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上海で死にそうになった話(2002/12/17)

 2002年12月13日、そういえば金曜日、ちょうど昼ごろ。長江を横切る楊浦大橋を過ぎたあたりの高速で死ぬ思いをした。タクシーに乗っていたのだが、横の車線の車が突然割り込んできて、こちらのバンパーと接触、車体がぶれ、ハンドルを切る。上海の高速は幅員がない。高架から落ちるかと思ったが、すんでのところで止まった。後ろから車も来ていなかった。助かった。割り込んできた車は先に行ってしまった。

 「俺たちまだ生きてるよね。」ムチ打ちになったなと感じながら運転手に言った。「今のは小姐だよ、きっと。それも新人だね。」彼は冷静に分析した。昔、車を運転する人間はみんなプロだったのに、いまは素人が乗るから困るというのが彼の言い分だ。政府はナンバープレートの発行を制限して車両台数をコントロールし、そのナンバープレートも、外国企業が値段をつりあげるために、今では一枚三万元(約50万円)になっている。だというのに、金持ちの子息たち、そして外国帰りの若者たちがみな競って車に乗っている。「これからもっと危ない運転手が増える。このままでは交通は大混乱になってしまう。」ある意味でもっともな話である。だが、中国人は車の運転がうまい。だからきっと大丈夫だろうなどと筆者は思ってしまう。

 しかし、筆者は絶対に中国で運転しないようにしている。日本と車を運転する文化が違うからだ。一番大きな違いは、何かあったときにどうするかである。日本の教習所は「ブレーキ」を強調する。だが、中国ではハンドル第一。そして日本では「人に迷惑をかけない」を強調するのに対し、中国では「自分が如何に生き残るか」である。このおかげで自分は助かったというわけだ。あと、中国人は喧嘩っ早いように見えるが、割り込みなどに対しては異様に冷静である。別に勝手にしろといった具合である。日本人は、いったんどこかを走ると、その先の道までもが自分の道のように思えてしまい、そこに割り込まれると領域をおかされたような気分になる。中国人は、自分も横に移動するし、相手も移動する。道よりも、自分の車が大事である。このあたりの違いが大きい。

 日本人と中国人が車で競ったらどうなるだろう。日本人がまずは割り込まれて怒り、スピードをあげて割り込んで勝どきをあげるが、中国人はそっちのけ。中国人が割り込んで日本人がブレーキを踏むと、そんな大げさにと中国人が訝しがる。今度は日本人が脅しにかかると、中国人はハンドルでひょいとかわす。日本人は馬鹿にされた気がしていきり立っていく。お互い消耗しないうちに互いの運転の仕方を知っていればいいと思うのだが・・・
運転手が聞いてきた。「日本では車を運転するのが難しい?」
「きっと中国より簡単だと思うよ。」とりあえずハンドルをまわして逃げるしかなかった。

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