MENU

アジア政治史(2006年度前期、北海道大学)


授業科目種別 法学部
対象学部 法学部
教職科目種別 ×
他学部履修等の可否
責任者 川島 真
担当教官 木宮正史
その他の担当教官 ×
授業科目名(和文) アジア政治論
講義題目名(和文) 現代韓国/北朝鮮政治史
授業科目名(英文) History in Asia
キーワード 冷戦、南北朝鮮、韓国の民主化・経済発展、北朝鮮、千里馬運動
種類 講義
単位数 2
対象学年 3年、4年
開講時期 集中講義
対象学科・クラス ×
履修区分 選択
授業の目標 本講義では、韓国および北朝鮮を主たる対象として、その政治経済の発展力学について考察する。第二次大戦後、朝鮮半島は日本の植民地から「解放」されたが、冷戦の制約によって南北に分断され、朝鮮戦争を経て、グローバルな冷戦が終焉したにもかかわらず、現在でも南北分断が続く。金大中政権による対北朝鮮包容政策が一貫して進められた結果、2000年6月南北首脳会談が開催され、さらには米朝関係や日朝関係の改善などの動きも見られたが、2002年に入って米朝核危機の再燃などで緊張は依然として続いた。2003年以後、北朝鮮核問題を解決するための6者協議が開催され、2005年9月、解決に向けた共同声明が発表された。朝鮮半島冷戦において、南北関係は改善されつつあるが、米朝間の対立は依然として続く。
こうした朝鮮半島冷戦体制の変化を促進した内部要因のうち、最も重要なものは、韓国の持続的経済発展と政治的民主化である。韓国は、1960年代以降、輸出志向型工業化戦略を採用し、さらに、日韓国交正常化やベトナム派兵など、冷戦の制約をむしろ機会として利用することにより、経済発展を達成した。加えて、1980年代後半、従来の権威主義体制から民主主義へ、その政治体制を移行し、市民運動の活発な展開などによって民主主義を堅固化させている。そして、先進国化の過程で97年末「アジア通貨危機」に直面したが、選挙を通した与野党政権交代の結果、登場した金大中政権の下で、政権主導による経済自由化政策が果敢に断行されてきた。さらに、金大中政権を継承した盧武鉉政権の下で、従来韓国現代史においてタブーとされてきた諸問題に対する取り組みが行われているが、それは政治的不安定を伴っている。
他方、北朝鮮は、朝鮮戦争の国土破壊を「千里馬運動」などを通して克服し、中ソ対立の狭間で、主体思想という独自の社会主義路線を歩み、韓国との体制競争において、60年代までは優位な地位を保持することができたが、70年代以降、逆転され、現在では韓国との格差は決定的なものになっている。
以上のように、(1)朝鮮半島をとりまく地政学的条件に対する考察(2)グローバルな冷戦と朝鮮半島における冷戦との相互力学とその変容(3)開発体制下における輸出志向型工業化の「選択」と経済のグローバル化への対応とその帰結(4)権威主義体制の持続と民主主義への移行そして「堅固化」(5)韓国朝鮮の政治文化とその政治的帰結、という5つの視点から、韓国を中心に(北朝鮮を補足的に)、朝鮮半島を取り巻く政治経済のダイナミズムを、冷戦型開発独裁から脱冷戦型市場民主主義への移行として理解し、それがどのような政治力学を内包して展開されたのかを解明する。
到達目標 一方で日韓国交正常化40周年を迎え「韓流」ブームが席巻するが、他方で歴史認識問題や北朝鮮問題などに起因して良好とは言いがたい、朝鮮半島と日本との関係を、受講者が各自の視角から問い直すことが授業の第一の到達目標である。さらに、韓国政治・社会と緊張関係をはらみながら展開されてきた韓国「社会科学」の「営み」を紹介することを通して、知識社会学的な観点から、韓国に対して接近していく。さらに、その過程で、韓国政治経済を分析するのに必要な比較政治学の理論に関する紹介、検討を行い、さらにそれが韓国の社会科学にどのような形で導入されたのかにも関心を向けたい。
授業計画 以下のような暫定的なシラバスで授業を進めることを考えている。(ただし、あくまで暫定的なものであるので、正式なシラバスを開講時に配布して、授業に関する紹介を行う。したがって、受講者は第1回目の授業には必ず出席してほしい。もちろん、その後の授業にも出席することが求められるのは言うまでもない。)
1.授業のイントロダクションおよび朝鮮半島政治の現在 
2.朝鮮半島冷戦の起源:朝鮮戦争を中心に 
3.朝鮮戦争研究の進展をめぐって
4.前史としての1950年代:李承晩と金日成 
5.朴正熙政権の成立と第3共和国:北朝鮮との体制競争の本格化 
6.韓国の経済発展の政治力学 
7.韓国政治・北朝鮮政治の中の日韓・日朝関係 
8.ベトナム戦争と南北朝鮮 
9.維新体制の成立をめぐる政治過程とその理論的含意 
10.東アジア冷戦の変容と朝鮮半島における南北対話の進展とその挫折 
11.権威主義体制から民主主義への移行:その挫折と成功 
12.グローバル冷戦の終焉と朝鮮半島冷戦の継続:2度にわたる核危機を中心として
13. 比較の中の朝鮮半島政治 
授業は、配布したレジュメを中心として、日韓朝で製作されたビデオや関連各国の外交文書、南北朝鮮の法律文書などを活用して、いろいろな方法で理解を深められるようにしたい。また、授業の内容と関連した簡単なレポートを何回か提出してもらい、そのレポートに基づいて、授業に対する理解を深めることを考えている。
評価の基準と方法 試験を70%程度、その他、授業と関連した提出レポートや授業課題を30%程度として総合的に成績評価を行う。詳細に関しては、初回授業においてより明確で透明性の高い成績評価を提示するので、それを参考にしてほしい。なお、初回の授業時間に、木宮正史『韓国:経済発展と民主化のダイナミズム』ちくま新書を読んだうえで、何が新たな発見であったのか、また、特にわかりにくかった部分はどこか、さらに、この授業に関して最も期待することは何かなどをあわせたレポートを提出してもらう。2000~3000字程度とする。これも、成績評価の対象とする。また、韓国および北朝鮮の歴代憲法に関する分析を提出してもらうことを予定しているので、予め以下のHPサイトにおける、韓国および北朝鮮の歴代憲法を読んでおいてもらいたい。
韓国web六法(日本語訳)また、データベース 世界と日本 日本と朝鮮半島資料集(東京大学東洋文化研究所田中明彦研究室)にも目を通しておいてもらいたい。
備考  
教科書(3冊まで) 各自に配布するレジュメがテキストとなるが、教科書に準ずる必読文献として木宮正史『韓国:経済発展と民主化のダイナミズム』ちくま新書、韓培浩(ハン・ベホ)(木宮正史・磯崎典世訳)『韓国政治のダイナミズム』法政大学出版局をあげておく。特に、『韓国:経済発展と民主化のダイナミズム』に関しては、初回の授業時にレポートの提出を求めるので、授業前に一読することを求めたい。また、上記のHPから韓国および北朝鮮の歴代憲法をダウンロードして、授業に持参してもらいたい。授業前までに、教科書に準ずる必読文献にあたる書籍を何冊か出版する予定になっているので、詳しくは、第1回授業時における指示にしたがうこと。
講義指定図書(6冊まで) 詳細な参考文献は、初回授業で紹介するが、とりあえず、授業前に読むことを勧めるのは次の3冊である。
ドン・オーバードファー(菱木一美訳)『二つのコリア』共同通信社、1998年。
高崎宗司『検証 日韓会談』岩波新書、1996年。
崔章集(チェジャンジプ)中村福治訳『韓国現代政治の条件』法政大学出版局、1999年
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次
閉じる