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台湾総統選挙観察〔1〕(2004.3.8)

 3月3日(水)から台湾に来ている。主たる目的は歴史史料調査だが、20日におこなわれる総統選挙+「公投」もひとつの関心事である。前回の2000年の選挙の時には、国民党が勝利するであろうと予想し、3月17日か18日になってようやく民進党勝利を確信したという「失態」を演じたこともあり、今回の観察は慎重を期さねばならないと感じる。前回の「敗因」は、南部の動向をきちんと見ていなかったことである。南から北へと選挙観察をしていた、法政大学の塚本先生、東京外大の小笠原先生は早々に民進党の勝利を確信していたが、台北を見ていた筆者などは、それが理解できなかった。

 今回の選挙について、日本などのマスコミでは、「統独問題」と「公投問題」に注目する。確かにこれに集約されている面もあるが、現在はもう「拉票」段階にはいり、そういった大枠の問題は遠景となっているように感じる。今のところ、台北の街中は「とても静か」であるが、集会はやっていた。3月7日(日)に中正紀念堂でおこなわれた「緑営」の集会を覗いた。そこでは、確かに大枠の問題も語られてはいたが、同時に敵対候補の出してくる「拉票」のためのスローガンへの反発を強めていた。今のところ、国民党側は、たとえば兵役三ヶ月など、現実可能性の低い様々な「公約」を掲げはじめている。これを焦りと見る向きもある。
陳政権は、経済政策や人材の面で確かにネガティブな側面がある。また中国の関係では、国民党+親民党よりもマイナス要素が大きいだろう。こうした点だけ見れば、圧倒的に「藍軍」有利のように思える。世論調査も依然として「藍」≻「緑」を報じている。だが、「藍」がメディアを支配している台湾において、世論調査で「緑」有利と報じられることはほとんどない。また従来「藍」と思われた客家票も分裂の兆しである。そして、南部は前回以上に「濃・緑」との話も聞く(馬英九の集会には数多くの人が集まったらしい)。5日のテレビにおいて、胡志強・台中市長が、台中地区では「藍」が10パーセント程度有利だが、「緑」が猛追している、と述べていた。陳水扁らは、現在北上を続けている。

 「僅差で民進党勝利になりそうだ。」これが今のところ「緑」よりの人たちのコメントである。テレビ討論でも、「藍」が精細を欠いたとか、「連宋」の関係がよくないとか、いろいろな噂が流れている。だが、一方で、20代の若い世代でも今回は「藍」に投票すると言っている人が多いということも耳にする。「阿扁帽」旋風は、今回は若年層にそれほど起きていないのかもしれない。今のところ、先の「三ヶ月兵役」、そして台北市・台北県の合併問題など数多く出されてきている「拉票」合戦が焦点となろう。それをやりすぎれば信用を落とし、有権者の心に訴えることができればいいのであろうと思う。コマーシャルについては、まだ生活の豊かさ、安寧全般を提唱するものが多く、まだ焦点が絞り込めない。有権者もまだ様子見という面が強い。

 いずれにしても、「2008年を視野にいれ、そして陳水扁にもう一期やってもらった場合に、次をどうするか」、「陳の政治生命を2008年で終わらせて良いのか」、「いまある問題は連宋で解決するのか」、「連宋が担当した場合に、過度に大陸に接近しすぎないか」などといった、「2008年+陳の政治生命+国民党への信頼度・将来性」が考慮の大きな指標となっており、そこにスローガンがからんでくるというのが現状であろう。〔了〕 

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