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カナダ出張報告(UBCにおける史料調査)(2002.9.9)

◇調査期間

02/SEP/02~09/SEP/02

◇調査対象

ブリティッシュコロンビア大学アジア図書館など

◇目的

中央研究院近代史研究所編『加拿大華工訂約史料(1906~1928)』(同研究所、1998年)に対応する、バンクーバー華僑の華字新聞『大漢時報』の調査、および現地の史料状況の把握。この新聞の所在は、数年前に塚本元・法政大教授に教えられた。

◇カナダ華僑関係史料(アジア図書館所蔵)

(1)大漢公報 The Chinese Times

 1905年にミッショナリー系の支援の下に発行された華英日報Chinese English Daily Newsを前身とする。1910年にこれが大漢日報The Chinese Daily Times となり、1915年から大漢公報The Chinese Timesになったとされる。この新聞は、革命派へのシンパシーが高いとされる。1911~12年にかけては、香港のThe China Dailyの主筆として知られた馮自由、そしてハワイの隆記報Lung Chi Paoの主筆であった張澤黎らを主筆として迎えていた。カナダ華僑は、辛亥革命前後、相当革命派に資金援助をしたとされており、この新聞も興中会系とされることがある。だが、それについてはより深い検討が必要である。今回は1914年から15年部分しか見られなかったが、孫文はほとんど売国奴扱いされており、時には袁世凱の御用新聞と疑われるほど、進歩党系の論陣を張っている。なお、コレクションじたいは1914年8月から1971年12月まであり、戦後も含めたカナダ華僑史全般を見ることができる。なお、マイクロ化されているので、マイクロリーダーでの閲覧となる。複写代金は一枚20セント。

(2)そのほか

 今回は時間も無く網羅的な調査ができなかったが、カナダ華僑についても、四邑系の会館が出したパンフレットや個人史料などが蔵されていた。新聞史料とともに利用したい史料である。また雑誌の部分などには、たとえば民国期の全国運動会の式次第に関する史料など、ほかではあまり見られないものも多かった。継続調査が望まれる。

UBC Asian Library

 1960年設立。マカオの蔵書家の手元にあった「蒲坂蔵書」を基礎とする。現在は50万冊の資料を有するカナダを代表するアジア図書館。中国・台湾・日本関係が中心だが、インドや東南アジア関係の図書も多い。利用に際して特に手続きはいらない。複写は一枚20セント(一ドル=80円弱)。日本語蔵書については権並恒治氏がこれまで多くの研究者の支えとなってきた。当初の蔵書は3万冊、いまは17万冊になる。権並氏の功績はカナダの日本研究者だけでなく、日本の研究者からも高く評価されている。また同氏はカナダの日系移民研究者でもある。今年、この権並氏が退官され、いまは竹本裕子氏が後継者として勤務している。今回の調査は竹本氏のサポートが大であった。この図書館はアジアセンターと同一の場所にある。いちどサバティカルなどで長期滞在したいところである。

UBC Main Library

 大学のほぼ中央にある図書館。アジア関係図書もあるが、注目に値するのは数年前に移管されたThe Chung Collection。今回は二階の展示室を参観したが、今後公開の可能性もあろう。このChung(蒋)氏は、旅行業、移民、鉄道など各方面で活躍した人物。個人アーカイブとして注目に値する。

UBC人類学博物館/新渡戸記念庭園

 先住民のコレクションが有名。アジア図書館から徒歩5分。新渡戸庭園は万博の記念で残されたもの。アジア図書館から徒歩3分。維持費がかかると悪評もあるが、静かな(一応)回遊式庭園。

◇ブリティッシュコロンビア大学

 カナダの西部を代表する大学。トロント、マギールに次ぐ名門。理系中心だが、アジア研究においてはカナダのセンター。文系ではインディアン研究を軸とする人類学が強い。理系は林学部をはじめとする環境方面など、幅広く展開。州立。街中からはバスで20~30分程度。

◇バンクーバーという街

 基本的に太平洋型都市。東海岸のような欧州的な雰囲気は無い。天然の良港によって育まれた、静かで穏やかな都市。ブリティッシュコロンビア大学の土地それじたいをインディアンから借りているように、インディアンが人口のうちの1割程度占める。またアジア系も3割程度いるという印象。インド系、特にシーク教徒が目立つ。治安は比較的よい。政治的には、やはり社会民主党系統が社会保障重視の政治をした結果、財政が破綻。いまは自由民主党系。しかし、増税が続いている。

◇バンクーバー博物館

 この地域の開発史を理解できる。先住民史だけでなく、鄭和の遠征から説くあたりが情味深い。特にエスニック別になっているわけでもなく、市民参加型の都市史的な色彩が強い展示になっている。

◇海洋博物館

 カナダ北方の海域警備にあたった船、RCMP Schoomer St.Rochをそのまま展示する。簡単なプレゼンの後、乗船して見学できる。第一次世界大戦において、国境警備をし、また各地に警備員を配置することが、カナダにとっての北方圏の主権確立であったことを始めてしる。また、先住民時代の舟(模型)の展示もある。

◇チャイナタウンなど

 古い華僑街であるチャイナタウンは、確かに会館などが見られるものの、いまは麻薬などが売られる「危険地域」。四邑の時代からの移民の状況を知るにはいいが、いまはリッチモンドに新しい華僑街がつくられつつある。台湾語も聞こえるが、基本的に広東語の世界。香港系が依然として強い。

◇そのほか

・ブリティッシュコロンビア大学内部はレストランなどに満ちているので、食事の心配はない。
・キャッシュディスペンサーも大学内にある。CIRUSにはいっていれば大丈夫。
・大学内部のゲストハウスも申請できる。
・電話などは、公衆電話から直接国際電話がかけられないので、国際電話用のプリペイドカードをあらかじめ購入しておくといい。

【付記】今回の調査にあたっては、前述の竹本裕子氏のみならず、UBC出身の北大博士課程の池直美さん姉妹に非常にお世話になった。記して謝意を表したい。

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